編集部 SNSでの発信は、グループ時代にはできなかったことですね。

 

稲垣さん そこは一人になってからの変化として、大きいものだったかなと思います。やっぱり、今のリアルが伝えることができるし、それを楽しんでくれる方がいる、すごく大切なツールですよね。今までは「ファンの皆さん」というひとくくりな感じで、個人個人としての繋がりを持つのは難しかったけれど、SNSのコメントなんかを通じて「ひとりひとりと向き合えているんだな」という実感がもてるようになりましたよね。SNSがなかった時代から応援してくださってる長年のファンの方と、そういう形で繋がれるのはすごく楽しいし、皆さんの人生みたいなものが見られるのも嬉しいんですよ。

 

編集部 SNSでの発信は思わぬところから攻撃を受けることもあると思いますが、稲垣さんのスルー力ってすごいなと拝見しています。

稲垣さん ありがとうございます。僕は、結構スルーが好きなんですよ(笑)。SNSって、使い方、楽しみ方ですよね。自分を苦しめない程度に、楽しく気楽に。あんまりまじめに向き合い過ぎてしまうと、なんていうか、「ザラッ」としてくるじゃないですか。でも僕は「サラッ」とするのが好きなので。もちろん周囲の方が、誹謗中傷みたいなものを目にしないような環境を作って下さっているのもありますが、実際に僕らに関しては否定的なコメントってすごく少ないんです。まだ経験できてないだけかもしれませんが。もちろん僕のスルー力っていうのもあると思いますよ。何を言われても、基本的になんとも思わないんですよね。あんまりブレないタイプなので。

編集部 ファンの方の生活が見えるのと同じように、稲垣さんの素の部分も、今まで以上に見せられる媒体でもありますよね、今回の写真集同様に。

稲垣さん そうです、それは結構ありますよね。芸能界って「別世界」っていう感じだし、スターって「雲の上の存在」みたいなところがあるじゃないですか。僕がそうだっていうことじゃないですが(笑)。SNSのおかげで、それがより身近に感じていただけるようになってきたのかなと思います。
ただその一方で、やっぱりある意味での「別世界感」も必要じゃないかと思うんですよ。やっぱりファンの方は夢を見たいし、エンタテイメントを見たいんだと思うから、それを演じ続けるのも大事だなと。僕自身も必要以上にさらけだそうとは思わないし。

編集部 確かに稲垣さんには、そういうイメージがありますね。

稲垣さん この本の帯にある「やりすぎない、でしゃばりすぎないのが好きです」って言葉が大好きで。これがモットーなんです。この間、ダウンタウンさんの番組に出た時、座右の銘で「あまり人に期待しない」って言っちゃったんですが、馴れ合いになりすぎるのも好きじゃないし、そのへんの距離感、人間づきあいの価値観、サラッとした感じが昔から好きなので。熱い人には嫌われちゃうかも知れないんですが……どうでしょう、皆さんが僕を見てどういう個性に映るのか、知りたいですね。

編集部 実は、もしかしたら「熱いもの」もあるんじゃないかなと。別のインタビューで、直木賞作品の『熱源』を絶賛してらしたので。あれって激アツ小説じゃないですか。

稲垣さん それタイトルの話じゃないですか?まあでも確かに、あの小説の登場人物はみんな熱いですよね。だから僕自身、そういうものへの憧れもあるのかもしれない。僕が「サラッ」としたいのはアプローチの仕方なんですよね。自分のそういうものを周囲に押し付けるのが嫌なんです。誰の中にも熱いものはあると思うし、僕の中にも当然、「熱源」はあると思います。それはまあーーやっぱり、仕事ですよね。僕にはずーっとそれしかやってきていないし、それしかない。こういうこと言うの、ちょっと恥ずかしいけどね(笑)。

『Blume』

稲垣吾郎 宝島社

19年ぶりのフォトエッセイ。連載時の未公開カットを含むフォト&エッセイに加え、仕事と自身の価値観について語ったロングインタビューを収録! ふだん着でいながら、どこまでも洗練された趣味人的ライフスタイルは見ているだけで癒やしの読書タイムになりそう。稲垣さん自身の撮影による美しい花の写真も必見。



撮影/YUJI TAKEUCHI (BALLPARK)
取材・文/渥美志保
構成/藤本容子

インタビュー前編「「慎吾くんの写真で実感。自分はブレてない」【稲垣吾郎さん】」はこちら>>

 
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