とくに産後の女性に多いといわれる「尿漏れ」。くしゃみや咳、重いものを持ち上げた時、というイメージがありますが、それ以外にも外出先や仕事中にいきなり漏れてしまったり、人によっては、歩いていたら知らないうちに……ということも。びっくりするし、恥ずかしいしで最初は皆さん焦ってしまうようですが、実はみんな言い出せないでいるだけで、困っている人は意外なほど多いんです。

そんな「尿漏れ」について、自由が丘ウロケアクリニックの佐藤亜耶先生に詳しく教えていただきました。


1.尿漏れって、どんな病気?

 

ひとことで言うと、「おしっこがしたいわけじゃないのに出ちゃう、漏れちゃうこと」ですね。何かの病気というわけではなく、尿が漏れている、という“状況”でしかありません。

というのも、尿が漏れてしまう要因や状況は人によって本当にさまざまなんです。加齢と関係が深い症状、というイメージがあるかもしれませんが、高齢になったら誰もがなるということではなく、いくつになっても全くならない人もいます。

尿漏れは、大きく分けて2種類あります。一つは、骨盤底筋という膀胱や子宮を支えている筋肉が緩んで起こる「腹圧性尿失禁」。くしゃみや咳で漏れちゃう人は、このタイプです。

もう一つは、過活動膀胱から引き起こされる「切迫性尿失禁」。まず過活動膀胱では、いきなり強い尿意をもよおす、といったことが起きます。それが頻繁になることで頻尿になり、その頻尿がひどくなることで切迫性尿失禁に進行していきます。過活動膀胱の尿意は自分の意思とは関係なく突然起きるうえ、女性は尿道が短いこともあって、我慢しきれずにおしっこが漏れてしまうんです。
 

 

2.病院ではどんな検査をする?


検査は基本的に問診と尿検査、それと超音波検査です。
尿検査で膀胱炎が隠れていないかを調べ、頻尿や尿漏れがある方は、臓器に問題がないかを診るために超音波で腎臓や膀胱をチェックします。また問診で、膣から臓器が落ちてしまう骨盤臓器脱などの可能性が考えられる方は、陰部のチェックをすることもあります。

尿漏れって本当に困っちゃいますよね。お洋服を濡らしちゃったり、今度はそれを防ぐために尿漏れパッドを使って、汚れたものが長時間肌に触れたままの状態になることで、膀胱炎の原因になることもあります。

ですから私は、診察の際にはとくに問診を大事にしています。直接おしっこに関係ないようにみえることが、治療のヒントになることもありますから。「どういう時に、どれくらい漏れるか」「どういうことが一番つらいか」など、いろいろ教えていただきたいと思っています。


3.尿漏れの治療法・期間


尿漏れの治療は、膀胱炎などと比べると長めになります。

「腹圧性尿失禁」は骨盤底筋の緩みが原因なので、体操を行うことで症状が軽くなっていくことがほとんどです。それでも難しい場合は、ごくまれに手術を行うこともあります。

「切迫性尿失禁」は、膀胱を広げるお薬を使った服薬治療を中心に、体操なども併用して行います。

尿漏れは歳を取ったら仕方がないもの、と思っている人も多いのですが、年齢は関係ありません。うちのクリニックも学生さんから高齢者の方まで、幅広い年齢の方が来院されます。10代で「尿漏れなんです……」と悩んでいる人もいますし、逆に80歳くらいの方でも「一回も漏れたことないわ」という人もいますよ。

また尿漏れは「一度なったら治らない」と思っている人が多いのですが、そうではありません。きちんと治療すればよくなりますので、諦めてしまう前に早めに病院へ行ってみてくださいね。

佐藤亜耶 Aya Sato

自由が丘ウロケアクリニック院長。女性泌尿器科、小児医療センター等の病院に勤務後、女性と子どものための泌尿器クリニックを開院。医学博士、日本泌尿器科学会認定専門医。二児の母でもある。


取材・文/梅田千恵(スタジオ・コル)
イラスト/徳丸ゆう
構成/山崎恵

 

【全四回】尿漏れ・頻尿についての特集ページはこちら
第二回「産後トラブルNo.1?!「腹圧性尿失禁」の原因と治し方」
第三回「さっきもトイレ行ったのに!頻尿、尿漏れを引きおこす「過活動膀胱」とは」
第四回「朝起きて愕然…。最近、大人の「おねしょ」が増えているワケ」