風邪、インフルエンザ、新型コロナは見分けがつくのか?
少しずつ寒くなり、風邪やインフルエンザが流行する時期を迎えつつあります。それに加えて、今年は新型コロナウイルス感染症も流行を続けています。そんな時期を前に大切になるのが、「風邪薬」の正しい使い方ではないでしょうか。今日はそんなテーマで、皆様からいただいた質問に答えていきたいと思います。
(質問)風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルスって、症状から見分けがつきますか?
難しいと思います。もちろん、インフルエンザや新型コロナウイルスが重症化すれば区別はつきやすくなりますが、軽症の場合にはあまり見分けがつかないことも多いと思います。
風邪は、鼻汁、喉の痛み、咳の3つの症状が揃うことで診断ができます。インフルエンザや新型コロナウイルスでもこのような症状が出る可能性がありますので、それらの症状だけから風邪であって他でないというのは困難です。ただし、インフルエンザでは高熱や関節痛が出やすい、新型コロナウイルスでは匂いや味覚の異常が出ることが多い(参考1)、重症化するケースでは最初の症状が出てから1週間ほど経過して呼吸困難が出る(参考2)などの報告がありますので、そのような特徴的な症状が出れば区別がつくかもしれません。
私の経験では、「昨日、アレルギー薬を切らしてしまいました。今日は鼻水が多いのでアレルギー薬をください」という訴えで来られた患者さんから、新型コロナウイルスを検出したということもありました。アレルギーと区別をつけるのが難しいケースもあるわけです。
ただし、軽症の場合は、必ずしも区別をする必要がないとも言えます。それは、治療方法にもあまり違いがないからです。少なくとも今年は、風邪をひいてしまったら「新型コロナウイルスかもしれない」と考えて動くのが良いでしょう。
(質問)そもそも風邪薬って何ですか?抗菌薬ですか?
風邪薬は、風邪の主な症状である鼻汁や咳、喉の痛みや熱などを軽減するための薬です。ウイルス感染症である風邪に、細菌に対する薬剤である抗菌薬は無効であり、抗菌薬は風邪薬には含まれません。
風邪薬には、それぞれの症状をピンポイントで抑える薬と、複数の症状を一つの薬で抑えられる「総合感冒薬」があります。
一般的に市販薬としてよく用いられているのは、「総合感冒薬」の方かもしれません。この薬には、複数の薬が混ぜ合わされています。中でも代表的なのは、解熱・鎮痛薬、花粉症などにも使われる抗アレルギー薬、そして咳止め薬の3種類の配合剤です。
これら3種類の薬剤が配合されることで、1つの薬を飲むだけで3つの症状が抑えられるようにできています。しかし、忘れてはいけないのは、3種の異なる薬の副作用リスクも抱えることになるということです。このため、不要な薬なら「念のため」で飲まない。これが鉄則です。副作用については、また後ほどご説明します。
(質問)市販の風邪薬って効かないのですか?
薬の成分自体は、市販薬と処方薬であまり大きな違いはありませんので、市販薬でも十分に対応は可能です。一般に市販薬の方が処方薬に比べて用量が少なく設定されていることもあり、それぞれの症状に対して効果が弱いということはありえます。ただし、それをもって「効かない」とも言えません。その投与量でも十分効くという可能性もあります。
大切なのは、ここでいう「効く」の意味を勘違いしてはいけないということです。薬が「効く」というと、風邪が早く良くなったり、ウイルスを体から駆除できたりするイメージを持たれるかもしれませんが、残念ながら薬にそのような効果は期待できません。
あくまで、ここで言う「効く」は、症状を軽くしてくれる効果であり、風邪を治すのはあくまであなた自身の免疫です。「風邪薬を飲めば早く治る」というのは科学的根拠に基づかない誤解です。風邪薬は、あくまで「対症療法」であるということを忘れないようにしたいですね。
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