菅新政権が携帯電話の通信料金の引き下げを強く求めています。具体的に4割という数字も出ていますが、携帯電話の通信料金は本当に4割も下がるのでしょうか。

 

携帯電話の通信料金については、安倍政権の時代から引き下げ要請が出されていましたが、その中心となっていたのが当時、官房長官だった菅義偉首相です。政府は通信料金について介入する法的な権限は持っておらず、あくまで要請だったことから、携帯電話各社は料金体制を見直しただけで、本格的な値下げは実現しませんでした。菅氏は首相に就任すると、再度、通信料金の引き下げを強く要請。今回は、各社とも前向きに対応する姿勢を示しています。

現在、日本の世帯は年間で12万7000円ほど携帯電話の通信料金に支出していますから(2人以上の世帯)、1カ月あたりの通信料金は約1万円ということになります。総務省の調査では、日本の通信料金は諸外国と比較して高いという結果が出ており、菅政権はこのデータをもとに引き下げ余地があるとしています。

しかし、通信料金の比較は、どの通信会社やプランをサンプルとして設定するのかで大きく変わります。総務省が以前に行った比較調査では、日本の料金は各国と同水準という結果も出ていましたから、日本だけが突出して高いというわけではありません。

携帯電話会社のコストのほとんどは人件費ではなく、通信設備などの機器類ですから、これは、どの国であってもほとんど同じになります。つまり、政府が特別な援助をしない限り、携帯電話の通信料金は国ごとで大きな違いは生じにくいのです。しかしながら、同じ年間12万円といっても、大卒の初任給が20万円の日本と50万円の米国では、負担感の違いが大きいのは明白です。先進諸外国よりも所得が大幅に低い日本人にとって、通信料金が高く感じるのは当然のことなのです。

では、今回の値下げ要請で本当に携帯電話の料金は4割も下がるのでしょうか。


もし携帯電話会社の業績を犠牲にしてよいということであれば、料金の引き下げは可能です。仮に4割の値下げが実現すると、日本全体で2.5兆円ほどの金額が家計に戻ってきますが、これは消費税を1%引き下げたことと同じレベルの効果です。しかしながら、携帯電話会社の収益はその分だけ減ってしまいますから、誰かがこれを負担しなければなりません。

 
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