世界中で愛されるゴッホの代表作「ひまわり」、フェルメールの「ヴァージナルの前に座る若い女性」、レンブラント「34歳の自画像」⋯⋯。“美の殿堂”ロンドン・ナショナル・ギャラリーの世界的傑作による展覧会が、好評のうちに東京での会期を終え、この秋からは大阪・中之島の国立国際美術館(2020年11月3日~2021年1月31日)へと舞台を移します。全61作品が初来日! 今年注目の展覧会です。

※この展覧会は新型コロナ感染症の感染予防・拡散防止のために、会期が変更になり、入場は日時指定制になりました。

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」が開かれる大阪・国立国際美術館。


ゴッホがサインを入れたのは2枚だけ! 


ゴッホの「ひまわり」は有名ですが、この「花瓶に生けられたひまわり」の画が、日本にある作品(SOMPO美術館蔵)を含めて7枚あったのはご存知でしょうか。しかしその中で、ゴッホがサインを入れたのは2枚だけ。今回初来日のロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵の「ひまわり」はそのうちの1枚です。どんな意味があるのでしょうか、いつどこで描かれたのでしょうか。『代表作でわかる 印象派BOX』の著者で東京ステーションギャラリー館長の冨田章先生に教えていただきました。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《ひまわり》 1888年 油彩・カンヴァス 92.1×73cm ©The National Gallery, London. Bought, Courtauld Fund, 1924

20代後半に画家を志し37歳で自死したゴッホの、画家としてのキャリアはわずか10年ほどに過ぎません。35歳で南仏・アルルに移ったゴッホは、そこに芸術家の理想郷を構想します。「黄色い家」と呼ばれる部屋を借り、ゴーガンを誘い、共同生活をして画を描きたいと夢見たのです。
明るい陽ざしを求めたアルルで、ゴッホは7点の花瓶に生けられた「ひまわり」を描きましたが、そのうちの2点にサインが入っています。ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵のこの「ひまわり」と、ミュンヘンのノイエ・ピナコテークが所蔵する1点です。ゴッホは「ひまわり」でゴーガンを歓迎しようと考え、この2点をゴーガンの寝室に飾りました。いわば「友情の証」ともいえる作品なのです。
ひまわりはゴッホが繰り返し描いた題材。その解釈については諸説ありますが、太陽とかかわりの深い花であることは、ゴッホにとって特別の意味を持っていたのでしょう。


『代表作でわかる 印象派BOX』では、ゴッホの生涯、代表作をコンパクトに解説しています。

ゴッホやセザンヌ、ルノワールのパリのアトリエやアルルを示す「印象派MAP」。今回のロンドン・ナショナル・ギャラリー展では、ルノワールの「劇場にて(初めてのお出かけ)」、モネの「睡蓮の池」なども公開されます。
 

 

イギリスが誇る「西洋絵画の教科書」初来日


幅広い地域と時代のヨーロッパ絵画を網羅し、13世紀後半から20世紀初頭までの名品約2300点を所蔵するロンドン・ナショナル・ギャラリー。ヨーロッパの多くの美術館のように王室のコレクションを母体にしたものではなく、市民のために市民の力で設立されました。ロンドンの中心部トラファルガー広場に面し、世界中から人々が訪れます。
作品の多くを常設展示している同館はまとまった数の作品の貸し出しに慎重で、1824年の設立以来200年近い歴史のなかで、英国以外で所蔵作品展が開かれたことは一度もありませんでした。ウッチェロ、フェルメール、ベラスケス、レンブラント⋯。そしてレノルズやゲインズバラ、ターナーといった英国の画家たち。英国が誇る至宝の初来日です。

ヨハネス・フェルメール 《ヴァージナルの前に座る若い女性》 1670-72年頃 油彩・カンヴァス 51.5×45.5cm ©The National Gallery, London. Salting Bequest, 1910

フェルメールの新たな模索が垣間見える、最晩年の一作。

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》 1829年 油彩・カンヴァス 132.5×203cm ©The National Gallery, London. Turner Bequest, 1856

イギリス最大の風景画家・ターナーの代表作。太陽の光に包まれた巨人退治の物語。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー内観 photo: Phil Sayer, ©The National Gallery, London

ロンドン・ナショナル・ギャラリーの年間の来場者は約600万人と言われています。

「西洋絵画の教科書」とも呼ばれるロンドン・ナショナル・ギャラリーのコレクション。イタリア・ルネサンスから19世紀ポスト印象派まで約400年にわたる西洋絵画の歴史を辿る、華やかな展覧会と言えます。
 


ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

【大阪展】
会期:2020年11月3日(火・祝)~2021年1月31日(日)
会場:国立国際美術館(大阪市北区中之島4-2-55)
開館時間:午前9時~午後5時30分(金曜・土曜日は午後8時まで開館)*入場は閉館の30分前まで
休館日:11月16日(月)、24日(火)、30日(月)、12月14日(月)、30日(水)~2021年1月2日(土)、1月18日(月)
※入場は日時指定制になります。
*会期、開館日、開館時間等が変更になる場合があります。最新情報は、展覧会ホームページにてご確認ください。

 

チケット読者プレゼントのお知らせ
5組10名様に「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」鑑賞券をプレゼント

大阪・国立国際美術館で開催される「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(2020年11月3日~2021年1月31日)の観賞券をプレゼントいたします。
※(11/11訂正)この招待券での日時指定はできません。会期中、どの日時でも先着順でご入場いただけます。ただし当日の混雑状況によりご入場までお待ちいただくか、もしくはご入場いただけない場合がございます。詳しくはこちら

応募締め切り:11月16日(月)〜11:59まで
●応募にはmi-mollet(ミモレ)の会員登録(無料)が必要です。
●プレゼントのご応募は、1回までとさせていただきます。
●当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。

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そもそも印象派って何?という疑問から、画家の生涯、作品150点の解説まで、「小さな印象派事典」というべき『代表作でわかる 印象派BOX』。この本で予習をして、美術展へ出かけませんか。

『代表作でわかる 印象派BOX』
著者 冨田 章 2000円(税別) 講談社

小さな印象派事典。画家の生涯と作品150点をやさしく解説。

マネ、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、スーラ……
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冨田 章
美術史家。東京ステーションギャラリー館長。1958年、新潟県生まれ。慶應義塾大学卒業、成城大学大学院修了。財団法人そごう美術館、サントリーミュージアム[天保山]を経て、現職。専門はフランス、ベルギー、日本の近代美術史。著書に『偽装された自画像』(祥伝社、2014)、『ビアズリー怪奇幻想名品集』(東京美術、2014)、監修書に『魅惑のベルギー美術』(神戸新聞総合出版センター、2013)、訳書に『ゴッホの手紙 絵と魂の日記』(西村書店、2012)、『クリムト』(西村書店、2002)、『ゴーガン』(西村書店、1994)などがある。

構成/からだとこころ編集チーム