脳ダメージによる「高次脳機能障害」

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脳卒中なら、血管がピンポイントで詰まったり、破裂したり。その部分の機能がやられます。私のような心肺停止の場合は脳全体が酸素不足になり、最初に記憶を司る前頭葉が障害を受けやすいと言われています。
実際、私は倒れる数日前に友人と温泉旅行に出かけたのですが、写真を見ても思い出せません。

 

意識が戻った直後から「看護師がなってない」と文句を言いだし、見舞いにきた家族に「二度と来るな」と毒づき、体に付けられた医療機器を外そうと大暴れ。どれもこれも記憶にございません!

怒りっぽくなる。記憶力、注意力が落ちる。段取りをつけて物事を遂行できなくなる。
この3つの特徴的な症状で低酸素脳症による「高次脳機能障害」と診断されました。
主治医から「一人暮らしに戻れるレベルじゃない」とリハビリ病院への転院を強く勧められましたが、私は「すぐに退院させろ」とガチバトル。自分に障害があると理解する「病識」がなく、思い通りに動けない、自分自身がよくわからない、不安、恐怖が混ぜこぜになっていたのでしょうが、周りを振りまわしたのは事実です。

後で知ったのですが、とにかく脳に障害を受けた場合は一日も早く本格的にリハビリを開始するのが回復の決め手。また、急性期から回復期のリハビリ病院への転院は、発症から2ヵ月以内で、入院期間は最大180日と保険適応の期間に制限があります。
しかも一度退院して、改めてリハビリ病院に入院した場合は保険適応にはならないため、症状が落ち着いたらボヤボヤしている余裕はなかったのです。

受け入れ可能なリハビリ病院がみつかり、監守のように厳しい看護師さん、夜になると変貌する同室の患者さんたちとお別れし、「なんで家に帰れないんだよ……」とうなだれつつ、私はある晴れた昼下がりにドナドナ風に転院。

そしてリハビリ病院で、私の入院セカンドステージがはじまりました。

それはまた次回へ。

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『山手線で心肺停止! アラフィフ医療ライターが伝える予兆から社会復帰までのすべて』
熊本美加・著 上野りゅうじん・漫画 鈴木健之・監修 1320円 講談社

毎年の健康診断では「問題なし」だったアラフィフの医療ライターが、ある朝、山手線で心肺停止に。予兆はなかったのか? その時、生死を分けたものとは? その後、高次脳機能障害となるもリハビリを経て仕事復帰するまでをまとめた「蘇りルポ」をコミック化。主治医の監修付きで実用書籍にしました。自分と大切な人のために、読んでおきたい一冊です。

文/熊本美加
構成/片岡千晶(編集部)
この記事は2020年11月24日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。

 

・第1回「山手線内で心肺停止!即死を免れた医療ライターが2週間前から感じた予兆とは?」>>

・第3回「心肺停止、脳障害から蘇った医療ライター「倒れた後の入院&治療のリアル」」>>

・第4回「山手線内で心肺停止から蘇った医療ライター「留守番の猫は?退院後にした3つのこと」」>>

・第5回「心肺停止から蘇った医療ライター「仕事復帰までの道のり、退院後の生活で困ったこと」>>

 
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