〔ミモレ編集室〕メンバーのおおつきゆみこです。
2020年9月よりスタジオジブリが場面写真の無料提供をスタートし、話題になっています。その中でも、女性の一生を描いた『かぐや姫の物語』。そのアナザーストーリーを「多様性」というキーワードがますます注目される2020年の今、改めて考えてみました。
ジブリの高畑勲監督の遺作となった『かぐや姫の物語』。2013年の公開時、映画館から出てすぐに「これはわたしみたいな独身女性の一生を描いてるんだ」と、かぐや姫に強く共感したことを覚えています。
でも、よくよく考えると最後は「月に帰る」……。「女は独身では幸せに生きられないんだよ」と言われている気がして、泣けたのですが悶々とする「しんどい作品」でした。
本作のあらすじは、言わずと知れた「かぐや姫」。ですが、子ども時代のかぐや姫が淡い恋心を抱く「捨丸兄ちゃん」というオリジナルキャラが登場したり、都でかぐや姫に求婚する5人の貴族とのやりとり、また、「御門」がかぐや姫を手に入れようとした際の印象的なシーンなど、細かな描写が加えられていることで、かぐや姫の心情が伝わってくる映画作品になっていました。
あれから7年、2020年になっても未だ独身のわたしは、あることを考えるようになりました。
「かぐや姫はどうしたら月に帰らずにすんだのだろう?」
予告編やポスターにも出ていた、かぐや姫が町中を全力疾走するシーンを覚えていますか?あれは「彼女がもしこうしていたら……」という「分岐点」を表現したのではないでしょうか。
疾走していった後に、月に見つめられながら雪の中で行き倒れてしまう。これは結果としては彼女の願望を投影した「夢オチ」で、実際の彼女は御簾の中で眠りこけていました。
こんな感じで、作中にあるいくつかの分岐点で別のルートを選んでいたら、かぐや姫は月に帰らなくてもよかったのではないだろうか……。
そう思ったわたしは、「もしも、かぐや姫がこの時こうしていたら?」という「if」を勝手に妄想してみました。
「もしも、かぐや姫がこの時こうしていたら?」いくつかの分岐点
・分岐点1
村を出ないでいたら?
初恋の人と添い遂げ婚。一番ハッピーエンドルートではないでしょうか。ただ、かぐや姫が自分の気持ちをはっきり自覚し、かつ、両親である翁と媼(特に翁)を説き伏せるだけの行動力が必要だったでしょう。ですが、人生のうねりに逆らうには、この時のかぐや姫は年齢が幼すぎました。
・分岐点2
5人の求婚者の誰かと結婚していたら?
都で暮らしはじめたかぐや姫の評判を聞きつけ、ぜひとも姫を妻に、という男性が殺到する中、選ばれた5人の求婚者。その誰かと結婚するのはどうだろう……と考えましたが、選びたいと思える男性がいません。なぜなら、5人中2人はニセモノの「宝物」をかぐや姫に差し出し、バレなきゃいいだろうという魂胆の持ち主。ほか、1人は勇気を持って海に出ますが、嵐に襲われた船の中でおびえる姿はいざという時に頼りにならないオトコ。残り1人は、宝物をツバメの巣から取ろうとして登った木から落ち、残念ながら死んでしまう悲運なオトコ。
最後の1人は、「姫が本当にお望みなのは宝ではなく我が真心なのではないのか」と説いて、かぐや姫の心を動かしましたが、正妻が登場し「多くの女を泣かせてきた」ダメオトコだと判明。うーん……どれもこれも結婚前から幸せになれないのが目に見えています。
・分岐点3
ニワトリを盗んでいた捨丸兄ちゃんを助けていたら?
かぐや姫が牛車で外出した時に、ニワトリを盗んでいた捨丸兄ちゃんと再会するシーン。このまま牛車から降りて彼のもとに駆け寄っていけば、愛の逃飛行ルートです。兄ちゃんも、盗もうとしたニワトリよりもかぐや姫を抱きしめて、ボコボコにされずに済んだでしょうが、その後はどうする?村に戻る?貧しい服装の彼を、かぐや姫の屋敷に連れていくのは難しそうです。でも、捨丸兄ちゃんエンドにするなら、思い切ってこのタイミングで出て行くべきだったかも。窃盗犯になっていた兄ちゃんもマジメに働いてくれて、村で幸せに暮らせたかもしれません……。
・分岐点4
「御門」と結婚していたら?
お金には困らなさそうです。でも、「わたしがこうすることで喜ばぬ女はいなかった」と言ってしまうナルシストぶりが気になります。そもそも、後ろから抱きしめられた時に「もうここにはいたくない」とまで思ってしまうほど生理的にムリな相手と、お金のためだけに結婚するのはどうでしょうか?
・分岐点5
捨丸兄ちゃんと駆け落ちしていたら?
月に帰る前、子どもの頃に住んでいた里山に戻ってみたかぐや姫は、捨丸兄ちゃんと運命的な再会をします。やっと二人の気持ちが通じ合いますが、すでに兄ちゃんは妻子持ち。「俺はお前と逃げたいんだ!」という彼の言葉通り、そのまま二人で駆け落ちしていたら?しばらくは空飛ぶ気分で幸せ!かもしれないけれど、完全に不倫状態です。しかも生活力に欠けるかぐや姫と、決して裕福ではない捨丸兄ちゃんのカップリングは現実的に生活が成り立つか疑問なところ。捨丸兄ちゃんは、結局は奥さんと子どもの元に戻って、かぐや姫は愛人のままキープされそうです……。
かぐや姫は恋愛のタイミングを逃すタイプかも?
何人かの男性の中で、
「捨丸兄ちゃんとなら、わたし、幸せになれたかもしれない」
再会した時にかぐや姫はこう言いますが、果たしてそうでしょうか?
何度か描かれる、捨丸兄ちゃんとどうにかなりそうな分岐点。
相思相愛なのに、なんで成就しないのか。
それは、かぐや姫からアクションを起こすことができなかったからではないでしょうか。
最後、ようやく自分から動いて想いを伝えるも、捨丸兄ちゃんはすでに妻子持ちになっていました。
かぐや姫は恋愛においては基本的に受け身で、チャンスを逃すタイプと言えるのでは……。
もし、捨丸兄ちゃんと一緒になったとしても、生活力だけでなく時には窃盗もやっちゃうサバイバルな日常に耐えられるほどの精神力が必要なんじゃないでしょうか。そこまでの精神力はあるのだろうか、彼女に。「もうここにいられない」って叫んでしまいそうな気がするのですが。
あれ、実際には幸せになれない……??
うーん、これではかぐや姫がやっぱり月に帰ってしまうエンドしか思い浮かばない……。
そこで最後に注目したいのは、彼女の才能について。
モノを作る仕事をしたら、生きている手応えが感じられたかも
そういえば、かぐや姫には「やらせるとなんでもできる」という才能がありました。
彼女って、実はモノを作るのが向いているんじゃないのかな。特にわたしがオススメしたいのは、機織り。都のお屋敷に着いた時に着物に大喜びするシーンがあったし、美しい着物を日常的に見たり着用していたから、センスも磨かれているはず。まずは織物を作って売ってみてはどう?なんてアドバイスしたくなります。
幼い頃の捨丸兄ちゃんの思い出は心に秘めて、自立のために機織りを極めてみたら、時間はかかるかもしれないけれど、「生きている手応え」が感じられて人生の幸福度は高まったんじゃないだろうか……。分岐点を妄想していたら、こんな結論に至りました。
あなたは、どうしたらかぐや姫が月に帰らずにすんだと思いますか?
おおつきゆみこさん
基本的に1人でふらふら行動するのが好きなマイペース人間です。 ファッションや都内のグルメに興味があり、好きな場所は銀座松屋・ルミネ・東京駅周辺。 独身の37歳で、仕事はニュースメディアの編集・ライターのようなものです ブログはその時の気分の向くままに書いてます。