今年後半、私がいちばんハマっていたドラマ、Netflixの「クイーンズ・ギャンビット」のことを。
私はドラマや映画は前情報を入れずに直感で選ぶことが多いのですが、このドラマを観始めたきっかけは、SNSでフォローしているセンスのいい方が投稿した、ドラマの劇中画像があまりにも素敵だったから。
ドラマのストーリーもわからないままその画像に惹かれ、「これは観た方がいいやつ」と思って鑑賞したら、出だしからすでに心を掴まれました。
とにかく映像の「絵」が美しい……!
50年代後半から60年代を舞台に、孤児院で育ったヒロインのベス・ハーモンがチェスを覚えて天才的プレイヤーとして上り詰めて行くというストーリーなのですが、その当時のファッションとインテリアのいいところをぎゅっと凝縮した、「目に美味しい」ドラマ。
ヘアメイクを担当したダニエル・パーカーが作品の世界観を完璧に作り上げるために考え抜いたというベスのヘア。ダニエルいわく「赤毛以外に考えられなかった」といい、演じるアニャ・テイラー・ジョイも、ブロンドヘアを赤に染めることに「私も同じことを考えていたわ」と同意したとか。メイクはマットな質感の肌にアイラインを引いて赤のリップ。そしてエレガントに巻いたヘアスタイルは、往年のハリウッド女優である、ナタリー・ウッドやリタ・ヘイワース、ローレン・バコールやグレース・ケリーからインスパイアされたもの。
そして何よりも観ていただきたいのが、そのゴージャスなインテリア。どう映しても絵画のように美しく仕上げられたインテリアと、それに合わせた衣装選びが見事で。映像を観ているだけで恍惚感を味わったのは、このドラマが初めて。
しつこいようですが、どのシーンを切り取っても視覚的にパーフェクトで、クリエイターの細部までのこだわりが伝わって来るので、見逃したくなくて目が離せない。こんなに映像が美しくて息を飲みながら鑑賞したドラマは今までありませんでした。
もちろん同名小説を原作とした脚本も素晴らしくて、毎回無駄なシーンがひとつもないので流し見などできず、私は毎晩とっておきのスイーツを味わうように大事に1話ずつ楽しみに観ていました。
強い生き方と心の弱さを併せ持つヒロインに共感!
この時代のチェスの世界は男性たちのもの。女だてらに大会を勝ち抜いて行くベスの姿は周囲の女性たちに希望を与えるものとなるのですが、それは観ている私たちにとっても同じこと。男性に棄てられた過去があるベスの母親は幼い頃のベスにこう言います。「男たちは色々教えたがるけど、賢いわけじゃない。自分を大きく見せたいだけ。指図をしてきても聞き流せばいい。自分の思うままに進めばいいの。強い女にならなくちゃ」。そんな風に言い聞かせられながら育ったため、ベスは男性に依存しない、プロのチェスプレイヤーに成長したのです。
男性に依存しない自立した女性のはずのベスには薬物とアルコール依存症という闇の部分があるのですが、その己の悪癖と戦う様子もとてもリアル。それは、どんな華やかに見える人間でも、いちばんの敵というか、克服しないといけないのは自分自身の弱さだと思うから。そんな弱さも含めて人間らしいところが、ベスの魅力を引き立てている。
ヒロインを演じるアニャ・テイラー・ジョイは、2020年全英公開の映画「エマ」(日本公開未定)で主演に抜擢されるなど、2021年も活躍間違いなしのitガール。そんな意味でも要チェックな「クイーンズ・ギャンビット」。
観ているだけで美意識が磨かれる作品なので、年末年始のお休みのお供に、ぜひ!
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