コロナ禍で「東京一極集中」は本当に解消されるのか_img0
朝の通勤ラッシュ時の東京・品川駅(写真は2019年当時)。写真:D.Cunningham / Shutterstock.com

このところ東京からの転出者数が増加しています。一部からは、テレワークの普及で郊外や田舎で生活する人が増え、東京の一極集中が是正されつつあるとの見解が出ており、もしそれが本当であれば、喜ばしいことだと思います。しかしながら、現時点においては、明確にそのようなトレンドになっていると断言できるデータはありません。

 

生活圏を変えることは、相応の経済的負担を伴います。新型コロナウイルスの感染状況がどう推移するのかも流動的ですから、特に住宅の購入を考えている人は、すぐには決断せず、慎重に検討した方がよいでしょう。

総務省の人口移動報告によると、10月における東京都からの転出者は3万908人と昨年との比較で2972人増加しました。一方、転入者数は2万8193人でしたから、転入者よりも転出者が多い転出超過ということになります。東京はこれまでずっと転入超過でしたが、ここ4カ月はずっと転出超過となっています。

転出超過が続いていることから、冒頭で述べたように地方分散の流れが始まっているという解釈が出ているわけですが、現時点でそうであると断言するのは難しそうです。

今年の前半は例年通り、転入超過が続いていました。特に3月は転入超過が4万人となっており、多くの人が地方から東京にやってきました。3月は就職や入学のシーズンですから、東京に人が集まってくるのはいつもの光景です。ところがコロナの感染が本格化した5月には1000人の転出超過となり、東京から人が出て行くようになりました。6月にはプラスに戻しますが、7月に再びマイナスとなり、10月までずっと転出超過が続いています。

7月から10月までの間に東京を離れた人は約1万3000人にのぼりますが、東京都は900万人以上の人口がありますから、割合という意味ではわずか0.14%に過ぎません。しかしながら、今年4月に東京にやって来た人の約4分の1近くが地方に出て行ったと解釈することも可能です。

一連の動きは、テレワークというよりも、コロナによって失業者が増えたことに関係していると思われます。

 
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