前回の続きを、辛うじて残っていた、当時の思い出の写真と共に振り返ってみたいと思います。
学校では、鬼軍曹wにより授業中の撮影は禁止でしたので、自宅での練習風景しか残っていません。そもそも、当時はスマホなんて代物は、まだ存在しなかったわけで、そういう部分にも時代を感じます。シェフの写真が無くて、とっても残念。

シェフの冷たい態度の理由は?
言ってみれば成り行きで入った製菓学校だったわけで、もともと高い志を持って臨んだ訳でもなかった。シェフにはそんな心を見透かされていたのかもしれません。

仏文学とは切っても切り離せない、フランスの食文化を知りたいのだ!という、本業の延長線上にあった動機は、職人気質のシェフにしてみたら、全く面白くなかったんだろうなぁ。

それでも私が限られた座席に残れたのは、フランスで働く、日本人パティシエさん達の高い評価にあったのだと思います。技術があり、真面目で性格も良く、時間に正確で、努力は怠らず研究熱心。彼らはこの業界でとっても評判が良いのですね。面接官の一人の、校長先生が私を推して下さったのだ、と後で知りました。

私は私で、フランス菓子の面白さにのめり込み、これがきっかけとなり今の職場に出遭うわけですから、人生何が起こるか分からないですね。
ちなみに、鬼軍曹シェフには質問をし続けましたw。

外国人が目指し易いフランスの職業国家資格とは?
さて、フランスで何かの職業訓練を行う場合、目標としては、スタート地点となる基本的な国家資格があります。セー・アー・ペー(CAP)と呼ばれる、仏国立教育システムが発行する職業能力証明書(レベル3)です。
レベルとしては高卒程度のもので、「私はフランスでこの仕事をする準備が出来ています」、と証明をしてくれるお免状ですから、フランス人にとってはさほど胸を張って自慢できる種類のものではない、と思います。
外国人にとっては、労働許可証の申請をする場合などに、評価のモチーフになりますから、そういう意味では私にとって、大変価値のあるものでした。
気になるCAPパティスリーの試験内容は?

シュー菓子(シュー生地)、タルト菓子(サブレ生地)、ヴィエノワズリー(ブリオッシュ生地、パイ生地)、アントルメと言われるホールケーキ(各種ビスキュイ生地とクリームの仕込み、組立て、テーマ別のデコレーション)の、四種目の実技試験と、筆記試験、口頭試験があります(口頭・筆記試験についてはここでは割愛)。

受験票と一緒に試験会場が知らされます。使い勝手の分からない別の製菓学校のキッチンで作業をするのは、大変なストレスがあった事を覚えています。
私が受けた2012年度は、パリブレスト16個、苺のホールタルト、ブリオッシュ2型を各10個、洋梨とショコラのシャルロット(テーマは秋)を、6時間以内で仕上げる、というものでした。

試験のお題目は当日の朝に現場で配られ、30分で作業プランを作成。その通りに製作を進める事になりますから、非常に重要なステップで、集中力が必要とされます。
その後ラボに移動し、作業開始。材料の計量から全てが監視されており、ジャッジが点数を付けていきます。
作業中に失敗した、などのアクシデントが発生した場合には、ジャッジに報告。解決方法を提案し、何とか仕上げる、という工程も評価の対象になりますから、諦めない事が重要です。

全ての作業が終わった時には、廃棄ゼロ、作業台はピカピカになっている、という事が要求されます。この試験に対応出来る様に、授業での座学と実技訓練が構成されていたわけです。

実際の試験課題はこんな感じ(ホールケーキの頁)。デッサン通りに仕上げれば良いので、ここで美的センスは問われない。余計な作業は省き、全ての作品を、終わりまで確実に仕上げる事が最重要になります。

今振り返っても、この時期ほど何かに向けて情熱を持ち、目標達成の為に無心で頑張った事は無かったかもしれません。
私の修業時代とは、随分遅くにやって来た、青春そのものでした。
Comment
コメント