モデルとして、テレビ出演やラジオパーソナリティとしても活躍中の浜島直子さん、愛称“はまじ”。44歳の彼女が、ファッション、ビューティ、ライフスタイル、さまざまなジャンルで新しい自分を発見していく連載です。
初の随筆集『蝶の粉』を上梓したはまじ、そして初のメッセージ本『飽きる勇気 好きな2割にフォーカスする生き方』を発表した大草ディレクターとで昨年末に行われた蔦屋書店六本木店でのZoomイベントの特別対談を特別に掲載させていただきました! 後半はファッションのこと将来のこと、お互いの思いを率直に語り合いました。
「私はちょっと不自由なほうが自由に生きやすい」(はまじ)
はまじ:最近よく「自分軸」という言葉をよく耳にする。たとえば服を着るにしても、自分が好きなもの、自分が心地いいものを選ぶとか。私の場合、その日に会う人で何を着るかを決めていて。それって相手に好感をもってもらいたいってことだから、自分軸ではないなあとよく考えていて。人の目を気にしている自分が嫌になったときもあったの。私だって自分の好きな服を好きなだけ着たいんだけど、でもやっぱり……とぐるぐる2周くらい考えて、今は相手に好感持ってもらいたいと思うことに何が悪いんだ!(笑)、むしろこれが私の自分軸だって思うようにしたの。
大草:それがはまじの知性なんだと思う。きっと相手を思って選んだ服からコミュニケーションが始まっているんだよね。ラジオやテレビでパーソナリティをしていることもあって、服もひとつのコミュニケーションになることを知っているからこそなんだと思うな。
はまじ:そう言ってもらえると嬉しいなあ。実は風の時代が始まって「自分軸」だったり「好きなことを自由にやっていい」と言われたときに放り出された気持ちだったの。私はちょっと不自由なほうが自由に生きやすいなと感じていて。校則があったり、TPOがちゃんとあって、その中で組み立てていくほうが楽しいんだよね。
大草:それでいいのよ。それがなかなかできない人も多いから、それがはまじなんだよ。こうじゃないとダメということはないし、もちろん自分らしさを全開で行きたい人はそれでいいし。
はまじ:そっか、そうだよね。大草さん、本にも書かれてたけれど、ひとり褒めてくれる人がいるのはいいよね。
大草:そうそう。うちは夫がとっても褒め上手なの(笑)。
はまじ:これでいいのかなと自分でちょっと不安に思うときも、いいじゃない!と言ってくれる人がいると救われるよね。
大草:そうだね。でも、誰かに言ってもらうんじゃなくて、自分で言い続けたっていいんだよ。たとえば、寝るときに毎日呪文のように「今日もお疲れ様。よくやったね」って言い続けたら気持ちも変わってくる。英会話や長距離走のように続ければできるようになるし、気持ちも変わっていく。私、朝起きたときも、自分に「おはよう!」って言って「よしっ!」って気合い入れるの(笑)。言葉にすることで今日も頑張ろうと思えるんだよね。SNSを朝に上げることが多いんだけど、それは皆さんに向けたメッセージでもあるけれど、自分に言っているところもあって。
はまじ:わかるなあ。まさに「言霊」。いいことを言い続けたら、そっちに引っ張られていくことというのはあるよね。言葉といえば、本の中で、心ない言葉や苦手な話題になったときに「その話はパス、私はいいや」って伝えるというのがあって、とてもいいなと思ったの。相手を否定しているわけでもないけれど、自分の意志も軽やかに伝えていて。
大草:そうやって話題をよけるのもそうだけど、体ごと除けることも大事なんだよ。
はまじ:えっ!? 体ごと?
大草:そうそう。たとえば会社に属しているとして、同じ部署で一緒に仕事をしていて、どうしても合わない、うまくいかない人間関係ってあるじゃない? 相手はそんなつもりがなくても、その人から投げられた言葉が自分にとってストレスになるようなときは、たとえば物を拾うような振りして、飛んでくる言葉を除ければいいの。言葉には波動があるから、そこから自分をずらせばいい。これ、結構効くのよ。それだけでストレスは軽減できるはず。
「年齢は記号だから意識してないなんて言ってきたけれど、めっちゃ気にしてるなと(笑)」(大草)
イベントの終盤には参加して下さった視聴者の方からの質問にも答えていきました。ふたりの人柄からか、質問は元気でいられる秘訣やモチベーションの保ち方などが多数寄せられました。
Q.文章を書くときに大事にしていることは何ですか?
はまじ:なんだろうなあ。書くということに向き合ったのが初めてだったんですが、自分の中のルールとして「誰のことも傷つけない」というものを作っていました。
大草:まったく同じことを思ってた!
はまじ:大草さんは何でそう思ったんですか?
大草:自分が言葉に追い詰められたり、言葉で傷ついたことがあったから。
はまじ:全く同じ! 自分も言葉に閉じ込められた経験があったからなの。私の言葉で誰かを幸せにしたいとか、かっこいいこと書きたいとか、そんなおこがましい気持ちはなくて。ただただ言葉で誰かを苦しめたり、傷つけたりしたくないなとはつねに思っています。
Q.おふたりにとって生きがいや元気の素は何ですか?
はまじ:私はしゃべること。嫌なことでも何でも話すことで払拭されるところがある気がします。悩みも愚痴も失敗談も笑いのネタにして誰かに話すことが元気の源かなあ。
大草:話すことがはまじにとって元気の”発電機”なのか、面白いね!
はまじ:収録でもストップって言われるまでずっとしゃべってるかも(笑)。
大草:話すことが元気の源だって気づいたきっかけって何だったの?
はまじ:すごくいい質問ですね(笑)。モデルを始めてわりと早い段階で「私は表紙を飾る花形のモデルじゃない」って気づいたの。そのときに看板モデルの彼女たちにはなくて、私が得意なことって何だろうなと考えたときに「話すこと」が浮かんで。
大草:そうなんだ。はまじは自分の得意や好きを若い頃から冷静に見ていたんだね。誰かになろうとせずに自分をしっかり見つめていたのは素晴らしいこと。
はまじ:最初は挫折に感じだけど、そのおかげでテレビやラジオなど他のことにチャレンジできたなと思っています。大草さんの元気の素は?
大草:元気の素からは話がずれるんだけど、今のはまじの話を聞いて、私も同じように自分の好きや得意を見極めたときがあったことを思い出しました。独立してフリーランスのスタイリストになったときのことなんだけど、スタイリストって海外の雑誌にもスナップされるようなセンスがあっておしゃれな人もいるじゃない?私はそうではなくて、言葉で表現するが得意なタイプ。だからこそフリーランスのスタイリストになってからも編集者時代と同じくスタイリングだけなく原稿も書いていました。どんなに忙しくても書いて伝えるところまでが私の仕事だと。自分の得意や好きをしっかりと見極める時期は誰にとっても必要なものなんだよね。
話を戻して元気の源というとやっぱり食事かな。一食でもおろそかにするのがイヤなの。決して手の込んだものを必ず食べたいということではなくて、ファーストフードだったとしても自分が食べたいと思うものを食べたくて。時間がないからしょうがなく食べるというのが絶対にしたくない。
Q.仕事のモチベーション下がったときにどうする?
はまじ:仕事じゃないけれど、昨日はお疲れ状態のところ、息子からハンバーグを作ってくれと頼まれて。どうしても気持ちがのらないからワインを片手に作ったかな(笑)。仕事に関しては、絶対に120%でやらないと気が済まない性分なんです。中途半端でモヤっとした気持ちになるのがイヤで。モチベーションをあげたいときは、終わった後のご褒美を考えるかな。美味しいもの食べようとか、カフェでゆっくりしてから帰ろうとか。あとはとっておきの服を着ていく!
大草:そっか、服の力を借りてるんだね。私は基本的には好きなことだけやっているからモチベーションが落ちることはそうないんだけど。どうしても下がってしまったときは不安要素を排除するかな。ただ文句をいうんじゃなくて、状況を説明して、どうしたら不安要素を排除できるかを考えます。ちょうどミモレを始めて2年目のときに、ありがたいことだけどイベントが続いてほぼ休みがない時期が続いたことがあったの。1時間のイベントであっても、そのために前々から体調と気持ちを整えている。そして楽しいからこそパワーも使うし、その分疲れるんだよね。このイベント続きがこの先も毎シーズンだと無理だなと思ったから、自分がイベントのために準備していることや何が大変で辛いかをしっかり周りに説明して不安要素を全部排除できるようにしました。ただ辛い辛いって文句を言っているだけだと余計に辛くなるから、ちゃんとどうしたらいいかを説明して解決していくようにしています。
Q.風の時代になりましたが、どのような人、女性でありたいですか?
はまじ:どうしよう? ガラッと変われないけど、毎日を軽やかにストレスフリーで生きられる人でいたいなとは思っています。たとえば晩ご飯を作るモチベーションがあがらないときは、「今日はうどん食べに行こう!」と後ろめたく思わず軽やかに言えるような。あとは自分の好きなことをもっと堂々とやっていきたいし、日常生活をワクワク楽しめたらいいな。50歳までの小さな目標かな。
大草:私はもう50歳は至近距離。2021年はエイジングをさらに意識していくことが目標かな。よく年齢は記号です、あまり意識してないなんて言ってきたけれど、めっちゃ気にしてるなと(笑)。でも左右されているわけでも怖いわけでもないなくて。だから自分らしい方法で、ホルモン、美容、体型のこと、おしゃれとの向き合い方、パートナーとの関係のこととか、エイジングにまつわることは発信していきたいなと思っています。
ふたりのイベント対談はこれにて終了。今回の対談とあわせてふたりの新刊を読むとさらに理解が深まるはず。ぜひ下記をチェックしてみてくださいね。
『蝶の粉』
定価 1300円(税別)
装画 ますこえり
「どうしてだろう、私は正しかったはずなのに」 これらは何ら特別ではない、誰にもで起こりうるささやかなこと。浜島直子、待望の初随筆集。瑞々しい筆致で綴った、 書き下ろし18篇を掲載。
『飽きる勇気 好きな2割にフォーカスする生き方』
定価:本体1300円(税別)
サイズ:四六判 208ページ
飽きることも、変わることも、
自分を愛することも、全部わがままじゃない。
商品開発やイベント出演のオファーが絶えないスタイリングディレクターで、ウェブマガジンミモレのコンセプトディレクターも務める大草直子氏。時代の転換点を⾒据え、「変化することを恐れない軽やかな⽣き⽅」のコツを指南する初の生き方本をこの度刊行しました。
「今の仕事・生き方でいいのかモヤモヤしている」「いつも人と比べてしまう」「子育てに自信がない」など人生に悩むすべての人がラクに生きられるヒントが満載の一冊です。
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