──入院中もインスタをこまめに更新していましたね。楽しそうで、いつもきれいで、どこが「患者さん」なんだろうと思いました。
高木 そうそう。がんだ、がんだって言うけどあまりに元気なので、真っ赤な嘘なんじゃないかと疑われているんですよ、私(笑)。
そのとき私が服用した抗がん剤は、髪の毛が抜けることはないけれど、湿疹が出るんです。だから、ファンデーションを塗って隠していました。
チークをすると血色がよくなるし、誰かがひと言、「きれいですね」とでも言ってくれると気持ちがアガりますから、お化粧は毎日していました。
それは、最低限のマナーでもあると思ったんです。看護師さんと接したりするにも、いくら病人とはいえ、きちんときれいにしていなければいけないのではないかと。
病室では、ウィッグ選びをかなり楽しんでいました。がんサバイバーの方が専門店を教えてくれて、価格は3000~4000円とリーズナブル。ですから6個も買っちゃいました。毎日違うヘアスタイルを思う存分、楽しんでいます。
──どうしてそんなにポジティブでいられるのか、秘訣を教えてください。
高木 オンラインで質問を募集した際も、その質問が一番多かったんですよ。次に多かったのが、「お化粧品は何を使っていますか?」。あれれ? 料理に関する質問はどうした?って(笑)。
目標を立てることは大事だと思います。たとえば、「○月〇日にインスタライブをやるぞ!」と決めると、それに向けて、何を話そうか箇条書きにして準備するとか、何より体調を整えておこうとか、前向きにしか考えなくなります。これが秘訣かもしれませんね。
そして諦めない。せっかくZoomで料理教室もできるようになったのに、病室から料理を配信するわけにもいかない。何かいい方法はないかなと考えていたら、生徒さんが、「私が料理を作るっていうのはどうですか。それをゑみさんが病室からアドバイスをする、という料理教室だったらできるのではないですか」とアイデアを出してくれたんです。
「それだーっ」と、思わず叫んでしまいました。生徒さんがもう一人、カメラマン役をやってくれて、私は病室から生徒さんが料理する動画を見ながら、「あ、そこ、もうちょっと待って、その調味料を入れるタイミングは、あ、今です、今です」って、熱血指導です(笑)。
初回のメニューは、考えに考え抜いた末に「オムライス」にしました。老若男女、みんなが大好きですよね。ちょっとしたコツを覚えるだけで、洋食屋さんで出てくるようなフワフワトロトロのオムライスができるんですよ。
コロナの影響で失業する人がいるとか、自殺する女性が増えているとか、胸が痛むニュースをよく目にします。本当に今、辛い思いを抱えている人が多いですよね。
私は、自分がどん底にいると思ったときは、こんな想像をします。鳥になって、大空にバーッと飛び立って、地上にいる自分のことを見てみるんです。そうすると、世界は広くて、自分の悩みなんてこんなちっぽけなものではないかと思える。そうやって自分を客観視してみます。
これは、料理から学んだ方法です。献立を客観的に見て評価する。そして、どうして失敗してしまったのか、客観的に振り返る。料理って、こうして得意が増えていくものなんですよ。
コロナも「ウィズ・コロナ」といわれているように、私はこれから、がんと共存していくことになるのだと思います。とりあえず次は、夜会巻き風のウィッグを探してみようかなと思っているところです(笑)。
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構成/片岡千晶(編集部)
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