社会を「生き抜く力」を育む──ソーシャル・エモーショナル学習
「生き抜く力」を養う上で、「ウェルネス」と並び、重要視しているのがソーシャル・エモーショナル学習(Social and Emotional Learning)です。
頭文字を取って「SEL」と略称され、近年アメリカの教育現場で大きなトレンドの一つになっています。
直訳すれば「社会性と感情の学習」となりますが、まさに、自分や相手の感情を理解することによって、社会性を養うための知識やスキルを習得する学習です。
現在のSELのトレンドのきっかけは、1960年代に行われたアメリカのイェール大学のプロジェクトとされます。
イェール大学周辺にある低所得者の多い学区で、生徒の生活習慣を指導したり、生徒間での関係性や感情サポートのプログラムが導入されました。
すぐに生徒の社会性や感情に関する能力の向上が確認され、生徒の出席率が上昇したり、クラスや課外活動での生徒指導の問題が激減したのが確認されました。
それと同時に、なんと生徒の学力も大幅に上がったのです。つまり、生徒の社会性や感情をサポートすることで、学力の向上につながることが分かったのです。
これによりSELが全米にさらなる広がりを見せます。SEL研究が進み、新しいプログラムが考案され、学校現場でもさまざまな取り組みが見られるようになりました。
まず、生徒はSELについて、社会性や感情についての知識やスキルを学びます。人間の社会行動や心の働きを心理学や脳科学の観点から学び、社会性や感情の働きに関する知識を得ていく。さらに、ストレスマネジメントのテクニックを学んだり、セルフアセスメントで自分の心を振り返る習慣を養います。
しかし、いくら頭で理解しても、社会性を身につけたり、感情をマネージする力を得ることは難しい。そのため、SELの授業による知識やスキルの習得と同時に、日々のオンライン授業の中にもSELをサポートするカラクリをこっそりとちりばめています。
例えば、セミナー授業では、他の意見を尊重しながら自分の意見を述べる機会が生まれ、対立をうまく解決する能力が身につきます。自由プロジェクトは、他の生徒とのコラボの仕方を学んだり、目標や計画を立てるスキルの習得にもつながります。
SELのカリキュラムで学んだ知識やスキルを、生徒が日々の学校生活の中で効果的に応用していけるような機会を意識的に作り出しているのです。
スタンフォード大学・オンラインハイスクールは、カリキュラムと日々の授業の両輪でのダブルサポートにより、オンラインでのSELを可能にしたのです。
こうしたオンラインでのSELの成果は、全米の教育学会などさまざまな場所で注目されてきました。
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