コロナ禍の下で日本の多くの学校がオンライン授業を取り入れましたが、学習効果を懸念している保護者の方は多いのではないでしょうか? もちろん保護者でない人にとっても、オンラインで授業がちゃんと成り立つのかどうかは気になるところですよね。

そんな私たち日本人の心配をよそに、2020年、アメリカではオンライン専門の中高一貫校「スタンフォード大学・オンラインハイスクール」が「アメリカの進学校」1位に輝きました。実は同校の校長を務めているのは日本人の星友啓さん。星さんの著書『スタンフォードが中高生に教えていること』には、同校が全米有数の進学校になれた秘訣に加え、これまでの常識を覆す教育方法が記されています。世界のトップクラスに君臨するスタンフォード大学の名を冠するだけあり、同校の授業は非常にユニークでありながら科学的根拠のあるものばかりで、学校教育を遠い昔に終えた筆者でも「受けてみたい」と思わせる魅力にあふれていました。今回は気になる本の中身を一部だけご紹介します。

 

スタンフォード大学・オンラインハイスクールは設立15年ほどの学校ですが、2020年3月には、ニューズウィーク「STEM教育に力を入れる高校ランキング2020」で全米3位に選ばれました。

また、Nicheというアメリカで大注目の学校ランキングでは、この5年全米トップ10の常連。2020年にはアメリカの進学校(College Prep Schools)で1位に輝きました。

その他のメジャーな学校ランキングでも全米トップ校として選出されていますが、上位に伝統校がひしめく中、まだまだ「若輩者」の学校が、オンラインであるにもかかわらず、全米のトップ校として認知されるようになったのはありがたいことです。

そうした高評価には、もちろん、卒業生たちの頑張りが大きく影響しています。

スタンフォードはもちろん、ハーバード、プリンストンなどのIvy Leagueの名門大学への合格実績は米国トップレベルです。大学卒業後、研究者や起業家の道を志す卒業生も数多くいます。

 


子どもの「生き抜く力」を育むミライ型の教育


振り返れば、スタンフォード大学・オンラインハイスクールが今のような評価を得るようになるまでの道のりは、決して楽なものではありませんでした。

2000年代から、大学や社会人教育を中心に、オンライン教育が爆発的な広がりを見せましたが、すぐに修了率の低さが問題視されるようになります。

さらに、オンラインでは社会性や感情の学習をサポートすることができないとして、オンライン教育の中高生向けの応用に懐疑的な視線が向けられます。

そうした状況で高校創立当初から、かなりの強い逆風に煽られながら、学校づくりをしていかねばなりませんでした。

しかし、私自身、その逆風はオンライン教育の問題の本質をついていると感じていました。それゆえ、回避すべきものではないと考え、真正面からぶつかっていく選択をしたのです。

これまでのやり方を踏襲しながら小手先だけでうまくやり、「学校っぽい」雰囲気のオンラインプログラムを作っても、世に認められることはないだろう。

それならば、従来の学校よりも学校らしいオンライン学校を作ろう。それにはどうするか?

オンライン教育そのものの常識はもちろん、それまでの教育の伝統にもメスをいれるような大改革が必要だと考えました。

そのためスタンフォード大学・オンラインハイスクールの学校づくりの軌跡は既存のやり方への挑戦の連続となったのです。

まずは何より先に、最重要プライオリティーに、子どもたちが社会で「生き抜く力」を育むことを目標に設定しました。

その上で、生徒たちが豊かな関係性の中で学んでいけるように、オンラインでのコミュニティーづくりを学校デザインの中心に据えます。

さらに、社会性と感情の学習(Social and Emotional Learning)や、体も心も含めた多面的な視点で健康や幸せを見つめ直す「ウェルネス」のプログラムを導入していきました。

そうした学校づくりを進めていく上で、「講義ベースの授業」「学年」「カリキュラム」「時間割」「放課後」「テスト」「順位付け・偏差値」など、これまであった「学校の定番」といえるような仕組みも、必要なかぎりどんどん見直していったのです。

ごくありふれた学校の風景をガラッと変えることを躊躇せずにやってきたのです。