「オチがすごい!」と話題になり、累計29万部を突破の短編小説『世にも奇妙な君物語』が、WOWOWオリジナルドラマとして3月から放送されます。著者は2009年に『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞してデビューを果たした朝井リョウさん。23歳だった2013年には『何者』で第148回直木三十五賞を戦後最年少で受賞されました。
(※2021年2月26日時点)

 

『世にも奇妙な君物語』は1話完結のオムニバスストーリーで、全5話を収録。女性フリーライターが社会人の男女4人で暮らすシェアハウスへの潜入取材を試みる『シェアハウさない』や“コミュニケーション能力促進法”なる法律のもと、大学生が能力調査会に挑む『リア充裁判』、ネットニュース編集部の世界で自分を肯定しようと必死にあがく女性編集者を描いた『13.5文字しか集中して読めな』など、知らないうちに現実と奇妙な世界への岐路に立たされた主人公たちを描いた作品です。

この小説を書くに至った経緯は、自身がテレビドラマ『世にも奇妙な物語』の大ファンだったから、と語る朝井さん。いくつもの書店で週間ランキング1位に輝くほど話題となった本作がドラマ化されるにあたっての想いや、小説を執筆されるときの信念などについて伺いました。

 


“いい気持ちにならない物語”への抵抗が強くなっている


朝井リョウさん(以下、朝井):本家のテレビドラマ『世にも奇妙な物語』では、ひとりの作家が5本すべての原作を担当することはありませんが、この作品では私ひとりで5話を書くことにしたので、本家ではできないことをやりたいと思いながら構成しました。書いているときは文章だからこそできる仕掛けかなと思っていましたが、この全5話が映像でどう表現されているのかを観るのが楽しみです。

『世にも奇妙な君物語』朝井リョウ(講談社文庫)

今回の5話はオムニバスストーリーでありながら、「オチがすごい!」と話題になったとおり、全話を通して観ることで新たな発見がある仕組みに。最終話を観終わったあとで、必ずまた最初のストーリーから再視聴したくなること請け合いです。しかし、このような作品を書くことの、今の時代ならではの難しさについても、朝井さんは語ります。

朝井:今は“いい気持ちにならない物語”への抵抗感が高まっている気がするので、それでも楽しんでいただけるものにできるかという点が難しいですよね。社会全体が明るい雰囲気でないうえに、『世にも~』はすべてのストーリーで登場人物にハッピーエンドが訪れるわけではありません。でも、「今は、こんな気持ちになるものはちょっと」と離脱されてしまうともったいないような仕掛けがあるので、ぜひ最後まで観ていただけたらと思います。

前述のとおり、朝井さんご自身がフジテレビの人気番組『世にも奇妙な物語』の大ファン。改めてその理由を伺いました。