育児と仕事に折り合いがつかなくても、決してマイナスではないと思っています。
本田香織という女性は先輩である上司に憧れているという側面を持っていました。田中さんもご自身の中で、憧れの女性像や先輩の女優さんの存在をお持ちなのでしょうか?
田中:先輩の女優さんで魅力的な方は本当にたくさんいらっしゃいます。私は特に古い昔の映画を観るのがとても好きなのですが、その中でも高峰秀子さんに憧れます。20代の頃、映画監督の原田眞人さんに「高峰秀子さんの『希望の青空』を観ておいて」と言われてDVDを観たのが最初なのですが、あまりの魅力に衝撃を受けました。ポップでユーモラス、それでいて力強さもありつつ、すごくピュアな部分をお持ちの方で、どんどん彼女の魅力にハマってしまいました。でも私は彼女のようにはなれないと思いますし、自分らしさを伸ばすことでそれが“個性”になっていくのでは、と思うんです。多くの先輩女優さんに憧れながら、自分らしさを見つけられれば。
田中さんご自身が感じられる“自分らしさ”とはどんなものなのか、それも伺ってみました。
田中:自分で分析するのはなかなか困難ですが、変化をしていくことが好きなので“変化が似合う女性”でいたいと思っています。自然に変化していけると嬉しいですね。
変化と言えば、田中さんは2年前にお子さんを出産されたばかりの、子育て真っ最中のママ。育児と仕事の両立に関して、どうバランスを取られているのでしょうか。
田中:バランスが取れているのかどうかも分からない状態のまま、本当にグラグラしながら進んでます。まだ、「育児とお仕事をこういうスタイルで両立しています!」と言えるまで到達してないような……(苦笑)。いろんな方に協力していただきながら、もっとこうしたほうがよかったかなとか、育児とお仕事の両立の方法を日々“揺れながら”模索しているという感じでしょうか。
この“揺れる”という感じは、女性特有なのかなと思ったりしています。母親として子どもや家族を“護る”という気持ちを抱えた自分と、主人公の香織のように社会に出てアドレナリン満タンで仕事に進んでいく自分の、両方が私の中に存在していて。もしかしたらこれからしばらくは折り合いがつかないまま進んでいくかもしれないですし……。
育児と仕事の両立は、職種によってそのハードさが変わるものではありません。しかしながら、“女優”という職業は時短ができるものでもないため、サラリーマンとして働く女性とは、また違った悩みを抱えることもあるはず。
田中:実際にやってみて最初に感じたのは、先輩の女優さんたちはこんなハードな時間を過ごしていたんだ!という驚きでした。私自身も撮影中は、朝方に授乳し、まもなくして現場に向かう、という感じで。台本は夜中に読み、セリフを覚えるのにこんなに時間がかかるんだ、というのが実感でした。でも、お仕事に行ったら、楽しくてしょうがないというのも事実。先輩の女優さんたちはきっとものすごい覚悟で現場にいらしてたのだろうなぁと。当時、もっと気を配っていればと反省しましたね。
だから、自分なりの折り合いをつけたりつけなかったり、でいいんじゃないかと思います。育児も楽しいし、お仕事も楽しい。都度、育児を優先するならこっちは出来なくなっちゃう、でもお仕事を選ぶのならこれは我慢しようかなとか。何かを我慢しても決してマイナスではないのかも、と思えるようになりつつあります。
妊娠・出産を経て、今は子育てとお仕事の両立を手探りで進めているという田中さんに、最後にご自身が女優として見つめている“ゴール”について伺いました。
田中:私たちの職業はお声をかけていただいて初めて参加できるものなので、自分だけでゴールを決めるものではないのかなと。出産を経て、お仕事に復帰してから、お芝居や演技というものにまた違った感覚で興味が湧いてきたというのがあって。昨年末、本多劇場の舞台に立たせていただきましたが、やはり居心地が良かったです。刺激的で新鮮に思えるのはとてもいいことだと思うので、この“新たな場所に触れているような感覚”を大事にしながら、いろんなことに恐れずにチャレンジしていけたらいいなと思います。
田中麗奈
女優。1980年5月22日生まれ、福岡県久留米市出身。1998年に映画「がんばっていきまっしょい」で初主演。日本アカデミー賞新人俳優賞など多数受賞。以降、映画・ドラマ・舞台と活躍。また2017年の映画「幼な子われらに生まれ」では第42回報知映画賞 助演女優賞をはじめ多数の女優賞を獲得。毎週金曜17:00~17:25、TOKYO FM「キュレーターズ~マイスタイル×ユアスタイル」ナビゲーターとして出演中。そして4月18日(日)から放送されるWOWOWプライム『連続ドラマW 華麗なる一族』にも出演予定。
ブラウス ¥43000/ヴィンス(コロネット tel. 03-5216-6518)
イヤーカフ、リング全て/カフカ(ハルミ ショールーム tel. 03-6433-5395)
<ドラマ紹介>
WOWOWオリジナルドラマ
『世にも奇妙な君物語』
(全5話)
直木賞作家、朝井リョウの同名短編小説を黒島結菜、葵わかな、佐藤勝利、田中麗奈、上田竜也の主演でドラマ化!5人の主役が、どんでん返しだらけの世界に迷い込んでいく。
黒島結菜演じるフリーライターがシェアハウスに潜入取材する「シェアハウさない」、葵わかな主演の「リア充裁判」、佐藤勝利(Sexy Zone)が幼稚園教諭に扮する「立て! 金次郎」、田中麗奈が主演を務める「13.5文字しか集中して読めな」、上田竜也(KAT-TUN)がオーディションに挑む役者を演じた「脇役バトルロワイアル」の5つのエピソードで構成。
WOWOWオリジナルドラマ「世にも奇妙な君物語」は3月5日にWOWOWプライム、WOWOW4K、WOWOWオンデマンドで放送・配信スタート。
※第1話無料放送 ※ホームページにて第1話を期間限定で配信中
スタイリング/市井まゆ
取材・文/前田美保
構成/川端里恵(編集部)
mi-molletで人気があったため再掲載しております。
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