世界のエンタメ界から注目を浴びる韓国から、またひとつパワフルな作品が日本に上陸します。 

『ただ悪より救いたまえ』12月24日(金)よりシネマート新宿、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国ロードショー 配給:ツイン ⓒ 2020 CJ ENM CORPORATION, HIVE MEDIA CORP. ALL RIGHTS RESERVED


映画『ただ悪より救いたまえ』は、祖国から見捨てられた凄腕の暗殺者と裏社会でも恐れられる狂暴な殺し屋が、魔都バンコクで激突する極上のノワール・アクション。ファン・ジョンミンとイ・ジョンジェという、韓国映画界を代表する2人が主演としてそろい踏み。特に注目すべきは、ドラマ「イカゲーム」でちょっと情けなくも人情味あふれる主人公を好演したイ・ジョンジェ(祝!ゴールデン・グローブ賞ノミネート)が、ドラマとは180度異なる無慈悲な人物に扮していることです。果たして彼の素顔とは……? イ・ジョンジェさんの知られざる魅力と、映画制作秘話をホン・ウォンチャン監督に聞きました。

 


イ・ジョンジェさんは真のプロであると同時に、素顔は少年のよう


――「ただ悪より救いたまえ」でイ・ジョンジェさんが演じる殺し屋のレイは、「イカゲーム」のキャラクターとはまったく異なります。監督から見たイ・ジョンジェさんの魅力とキャスティングの理由を教えてください。

ホン・ウォンチャン監督(以下ホン):ふたりの主役のうち、最初にインナム役のファン・ジョンミンさんの出演が決まりました。ファン・ジョンミンさんは大スターなので、彼に見合う相方を誰にするか、すごく悩みました。日本の有名な俳優さんも候補に考えたのですが、当時の日韓関係を鑑みると難しくて……。そこで制作会社から名前が挙がったのがイ・ジョンジェさんでした。わたしが若い頃、イ・ジョンジェさんは青春ドラマのアイコンでした。初めて会ったときはどきどきしましたね。わたしたちの世代にとって、特別なスターなので。

レイは型破りでインパクトのある役です。どう演じるか、ミーティングを重ねて意見を交わしました。そんななか、「イ・ジョンジェさんが役作りについてすごく悩んでいる」と伝え聞きました。レイという人物を通じて、新しい姿を見せたいと強く願っていたようです。それを聞いて「この俳優は、必ず良い形で演じてくれるに違いない」と確信しました。

――映画を一緒に作りながら間近で見たイ・ジョンジェさんは、本作のレイと「イカゲーム」のギフンのどちらに近い雰囲気でしたか。

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ホン:撮影現場でわたしが見たイ・ジョンジェさんは、すごく静かな人でした。周りの人と話をするわけでもなく、自分の役を撮り終えると去っていく。そんなスタイルです。待ち時間には言葉を発さず、カメラが回った瞬間にすべてを出し切る。撮影が始まるとまったく別の人になるんです。イ・ジョンジェさんがインタビューを受ける時の映像を見ると、いつも穏やかに微笑みを浮かべ、ジェントルですよね。あれが普段の姿です。真のプロであると同時に、素顔は少年のような感じでもあります。

イ・ジョンジェさんはキャリアが長く、以前の作品でもさまざまな姿を見せてきました。ひとつの役に似ていると断定することはできません。本作のレイも、ある意味新境地への挑戦でした。意図的にセリフや表情の力を抜き、淡々としたキャラクターを狙ったんです。本人もそういう役にチャレンジしてみたいと言いました。青春のアイコンのような役から強い男性的なイメージまで幅広い演技をこなし、時代劇ではカリスマをまとう役も多い。「イカゲーム」でもこれまでとはまったく異なる小市民を演じています。ひとつのイメージでは語れないのがイ・ジョンジェさんです。彼は異なるイメージを演じ続けることを望んでいるように思えます。