ここ数週間で何度か、喉まで出かかって呑み込んだ言葉があります。

「……それはマンスプレイニングですよ」

 

「マンスプレイニング(mansplaining)」とは、2010年に米ニューヨーク・タイムズの"Words of the Year"にも選ばれた言葉で、男性が、女性の方が詳しいトピックについて説明したがるような行為を呼ぶ、ManとExplaining(説明する)を掛け合わせた造語です。

もとはアメリカの作家レベッカ・ソルニットが書いた「Man Explain Things to Me(邦題:説教したがる男たち)」というタイトルのエッセーが語源になっているとされています。そのエッセーでは、ソルニットがある写真家についての著書を書いた年に、参加したパーティで主催者の男性に「君はこの写真家について今年重要な本が出たのを知っているかね」と聞かれます。

その男性が講釈を垂れているうちに、ソルニットこそが、その「重要な本」の著者であることが分かる――という痛切なエピソードが紹介されています。しかも、あろうことかその男性は実際には本は読んでおらず書評で知っただけだったということです。

付随して「マンタラプション(manterruption)」という言葉もあります。これはManとInterruption(遮る)を掛け合わせたもので、男性が女性の発言等をさえぎる行動(詳しくは、前田健太郎『女性のいない民主主義』など参照)。米選挙戦や各国の議会などでも、女性が話し終わる前に男性がカットインする様子があったとTwitterなどでも拡散されていました。

この数週間、日本でも森・元会長の発言を巡って様々な場でジェンダー議論が沸き起こっていましたが、そこで冒頭の場面のように、私がつい口を挟みたくなったことがあります。それは、「女性が置かれた状況」についてを議論する場で、有識者の男性が、何度も何度も、別の専門家の女性の話をさえぎって、「それでね」「そうなんだけど」「それがね」とカットインしていたのです。本当に、何度も何度も。

 
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