自分たちで自分の経験を語り、正義を追及する女性たち

複数の被害者に告発され、窮地に立たされたクオモ知事。本人は「辞任はしない」と主張しているが…。 代表撮影/ロイター/アフロ

その後には、カレン・ヒントンさんという女性が「ワシントン・ポスト」に、アナ・リスさんという女性が「ウォール・ストリート・ジャーナル」に告発。ヒントンさんは、2000年、ホテルの部屋で親密なハグをされたこと、リスさんは手にキスをされたり、プライベートなことを聞かれたりしたと語っています。また、「タイムズ・ユニオン・オブ・アルバニー」は、クオモにブラウスの下に手を入れられて触られたという匿名の被害者の話を掲載しました。この被害者から出来事の詳細を聞いたというアリッサ・マクガースさんというクオモの下で働く女性も、自分やほかのスタッフがクオモのセクハラを受けたと「ニューヨーク・タイムズ」に語っています。

そして今月19日には、ジェシカ・ベイクマンさんというレポーターが、雑誌「ニューヨーク」にエッセイを寄稿。2014年、当時25歳だったベイクマンさんは、ホリデーパーティでクオモに体を引き寄せられ、なかなか離してもらえなかったことや、2012年、記者会見で質問したところ、まともに答えず、彼女の携帯を手にとってケースが紫だということについてコメントしたと振り返りました。若い女性であるベイクマンさんを、クオモはまともに扱っていなかったということです。

 


「私には力がないことを、彼は見せつけたかったのです」


クオモの担当記者だった頃、「自分が女性であることを常に思い出さされていた」と、ベイクマンさん。彼女はまた、クオモの態度は権力を示したいところから来ているとも言います。「州知事が私とセックスをしたがっていたとは思いません。権力について私には力がないことを、彼は見せつけたかったのです」「男性に対しても、彼のトレードマークであるいじめや、相手を貶めるようなことをやります。でも、女性に対してはやり方が違う。彼は触ったり、性的なことをほのめかしたりして、恐怖を煽るのです。それこそまさにセクハラです」と、ベイクマンさんは書いています。

これまで、クオモはそのやり方で成功してきたのでしょう。しかし、彼は、今が2021年だということを忘れていたようです。「#MeToo」が起きた2017年から3年以上が経つ今、女性たちはもはや黙っていません。今の女性たちは、ツイッター、ネットへのエッセイ投稿など、自分たちで自分の経験を語り、正義を追及します。時代の流れを無視していたらクオモのように悲惨な道を辿ることを、権力をもつ立場にいる人は、性別に関係なく、理解しておくべきです。
 


猿渡由紀
L.A.在住映画ジャーナリスト
神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『週刊文春』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイ、東洋経済オンラインなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

構成/榎本明日香


前回記事「NetflixとAppleで争奪戦勃発!女性監督の話題作とそのテーマとは?」はこちら>>

 
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