女性活躍推進や管理職の女性比率の増などが、日本に限らず世界的な課題として提唱されています。しかし、数値的な目標達成ばかりが推進されたとしても、“男性のように”働くことが求められたままでは、昇進や起業をためらう女性が少なくないのも現実でしょう。

12年間勤めた「テレビ朝日」を退職し、1年半前、単身N.Y.で会社経営者の道を選択した古瀬麻衣子さんが、日本人女性にも知って欲しい海外ビジネスを紹介します。出産や育児に更年期、心理的不安など……女性たちがミッドキャリアでドロップアウトしてしまう原因はさまざま。古瀬さんがN.Y.に滞在・取材する中で出会った、女性活躍をサポートするユニークなビジネストップ3とは?

 


出張先の母から子へ、母乳を輸送する「Milk Stork」


アメリカで初めて母乳を輸送・配達するサービスを2015年にスタートさせた「Milk Stork」。
創業者のケイト・トルゲンセン氏は当時7ヶ月になる双子のお母さんでした。アメリカは日本に比べて産休や育休の期間が短い方が多く、ケイト氏もある日、4日間の出張が発生してしまったそうです。粉ミルクに切り替えることも考えたそうですが、母乳で育てることの大事さを感じていた彼女は、出張の数日前から搾乳を何度も行い、双子の4日分の母乳を必死に準備しようとした。そんな時に考えついたサービスがMilk Storkです。

 

出張などでお母さんが赤ちゃんと離れてしまっても、出張地でお母さんが搾乳した母乳を冷蔵のまま、一晩で自宅の赤ちゃんまで配達してくれる。バリバリ働きながらも、赤ちゃんに最高の栄養を与えることを妥協したくないという母親の想いが生んだサービスです。

こんな悩みまでサービスにしてしまうアメリカはやはり面白いと感じずにはいられません。ターゲットが絞られるビジネスではありますが、今では企業の福利厚生としても取り入れられており、育児の途中で泣く泣くキャリアをストップすることがないよう、社会が女性の働き方を支えている気がします。アメリカの本社に取材をさせて頂いたところ、もし日本のワーキングマザーがアメリカ出張をする場合、アメリカで搾乳して、日本の我が子へ母乳を郵送することも出来るそうです!冷蔵でも、冷凍でも可能だとか。

 

日本では早く職場復帰したいものの、子供のことを考えると、しばらくキャリアから離れるしかないお母さんも多いですが、サービス次第でそのサポートはいくらでも叶う気がしてしまいました。

 


リーダーになるためのマインドセットや自己ブランディングを学ぶ「The Dream Collective」


オーストラリアに拠点を置く、ダイバーシティ&インクルージョンに特化したコンサルティングファームです。組織内における女性リーダーの育成を大きなミッションとしている会社で、2017年からは日本でもその活動を広げています。

The Dream Collectiveの研修の様子

オーストラリア在住の台湾人である創業者のサラ・リューさんは、大学を卒業後、大手の化粧品メーカーに勤務し、キャリアアップ・出世へのやる気をしっかり持っていたものの、「まだ若いから」「女性だから」「アジア人だから」という理由で、周囲から「昇進は難しいことだ」と当時言われたそうです。それでも25歳という若さで昇進を実現させた彼女は、自分の周りにいるマネージャークラス以上が男性ばかりであることに気がつき、社会や組織における現状を変えようとThe Dream Collectiveを設立したのです。

創業者のサラ・リューさん

サラさんとは同世代であり、私自身も日本の男性社会の中で様々なバイアスを感じてきた経験があったので、彼女の考え方にとても共感し、交流を持つようになりました。もちろんダイバーシティとは性別だけの視点で語られるものではありませんが、いま日本社会に置いて、人口が確実に減っていく中で、その人口の半分を占める女性が活躍できる、ドロップアウトしない仕組みを作っていくことは急務です。

The Dream Collectiveの中で私が興味を持っているのは、「イマージング・リーダーズ・プログラム」という2日間の集中プログラムです。組織内でこれからリーダーとなっていくミッドキャリアの女性に向けたマインドセットやパーソナルブランディング、さらに日本のカルチャーに沿った問題解決や交渉といったアクションの取り方などをじっくり身に付ける研修になっています。

また、様々な会社からミッドキャリアの女性が集まることによって、外部のネットワークを構築できたり、プログラム後に外部のメンターとの交流も含まれており、日本ではまだ浸透していないこの手の研修は、今後重要視されていく可能性を感じています。

テレビ局に勤務していた時、"リーダーシップ"というワードを意識的に気にする場面が何度もありましたが、自分で考えるしかなく、女性のロールモデルも少なく、行き詰まったことを思い出します。企業の人事部にとって、女性リーダーの活躍への期待を社内で示すためにも、欠かせないポイントであることは間違いありません。

 
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