ここで言うところのビジネスセンスというのは単なる「勘」のことではありません。世の中には非道なビジネスというものが存在しており、一部の人は、こうした汚い仕事をしないと儲からないと考えているようですが、現実はまったく違います。大きく儲けたければ、できるだけ多くの人を喜ばせる商品やサービスを提供するのが最短距離です。

アップルやグーグル、アマゾンがケタ外れの利益を上げているのは、非道なビジネスをしているからではありません。多くの人を満足させる商品やサービスを提供できたからです。実際にビジネスの世界に詳しくなると実感として理解できると思いますが、詐欺まがいのビジネスや消費者を愚弄するようなビジネスの収益は思ったほど大きくありません。

こうした現実をしっかりと理解できているのかといったあたりが、本来のビジネスセンスといってよいものです。

子どものうちから資産形成の教育が必要ということであれば、投資の実務を覚えさせるのではなく、むしろビジネスの本質について学ぶ機会を与えた方がよいと筆者は考えます。参考になるのは、米国の家庭でよく行われるレモネード売りです。

 

米国では、子どもがお小遣いを欲しがると、親がレモネードを作って近所に売ってきなさいと言うことがよくあります。しかし、ただレモネードを作っただけでは、誰も買ってくれません。

 

どうすれば美味しいレモネードができるのか試行錯誤を繰り返し、値段をいくらにすればよいのか、どうやって告知するのか真剣に考えます。そして、無事に「あの子のレモネードは美味しい」と評判になった子どもが多くのお小遣いを手に入れられるのです。

近所にレモネードを売るという行為は、単にお小遣いを稼ぐことが目的ではなく、どうすれば人に喜んでもらえるのか工夫することが大事であり、そして、人が喜ぶモノを提供できれば結果的にお金も儲かるというビジネスの本質について学ばせようとしているのです。

日本では仕事を苦役と考える人が多いのですが、商売というのは元来そのようなものではありません。子どものうちから、こうした体験を積み重ねて行けばビジネスの本質を理解することができ、結果としてどのような企業が伸びるのか容易に想像できるようになるでしょう。

米国では確かに株式投資が盛んですが、子どもの頃から積極的に株の買い方を教えているわけではありません。しかし、ビジネスの意義や価値、楽しさについては、社会全体で教育するシステムが整っており、その典型がレモネード売りということになります。

子どもに金融リテラシーを身につけさせたいと思っているのなら、まずはビジネスの重要性から教えてみるのが良いのではないでしょうか。


前回記事「近い将来、誰もが人工肉を食べることになる、という話(望むと望まざるとに関わらず)」はこちら>>

 
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