時代の潮目を迎えた今、自分ごととして考えたい社会問題について小島慶子さんが取り上げます。
あなたの顔が好き!と言われるのと、あなたの声が好き!と言われるのは、どっちが嬉しいですか?あなたを見ていると幸せ……と言われるのと、あなたと話していると幸せ……と言われるのでは、どちらがより愛されている感じがするでしょうか。
目で好かれるのと、耳で好かれるのとは違います。前者は一方的に好かれる感じ、後者は自分を知ろうとしてくれている感じがしますね。目は早とちりで傲慢だけど、耳は目よりも思慮深く、友好的なのです。
ポッドキャストやオーディオブック、音声SNSが人気です。何かをしながら、情報を得ることができる。発信するのも簡単。誰でも手軽に発信や会話を楽しめます。
私も音声SNSのClubhouseや、誰でも番組を持てるstand fmで発信していますが、リスナーとしても参加を楽しんでいます。Clubhouseで知らない人に混ざって即興的に話すのはとても楽しいですし、stand fmでは、ある海外移住した30代夫婦の番組が好きで、毎日聴いています。二人の人柄が会話から伝わってきて心地よく、何気ない話に励まされたり気持ちが和んだり。とても勉強になります。
音声アプリのいいところは、なんと言っても姿が見えないこと。特に女性や社会的マイノリティの人にとっては、映像メディアよりも音声メディアの方が安心できる場所と言えるでしょう。それを実感したのは、放送局でアナウンサーとして働き始めた頃でした。
身長が172センチあり、童顔ではなく、ハキハキ話す私は、テレビに出ると「デカい・老けてる・生意気」とよく言われました。私の容姿や雰囲気は、「若手女子アナらしさ」から外れていたのですね、
ディレクターと一緒に綿密に構成を考えて生中継を出しても、言われるのはメイクや衣装のことばかり。より詳しく面白く伝えようとしても「アナウンサーなのに目立とうとしている」と言われます。印象を変えようと長い髪を切ってボブにしたりもしましたが、何をしても「デカい、老けてる、生意気」は変わりませんでした。
ところがラジオでは、テレビに出る時とは全く反応が違うのです。同じように話しても、生意気なんて言われない。年齢で判断されることもなく、“女子アナ”のくせにとも言われません。面白いね、また聞きたいと言ってくれるのです。狐につままれたような気持ちでした。なんでおんなじ私なのに、こんなに評価が異なるの?姿が見えないから?ならこんな見た目、いらないよ!おじさんの着ぐるみが欲しいよ!そうしたらきっと、テレビでもみんな私の中継の中身を聞いてくれるのに、と。
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