昨年から話題になっている女性の生理。今までタブーとされていた話題について、ひとつ切り込むきっかけとなったのが、「Bé-A Japan(ベア ジャパン)」の超吸収型サニタリーショーツ。

知的障がい者の生理の現実...ニュースになった「吸水ショーツ」想定外の反響とは?_img0
 

なんと、クラウドファウンディングで1億以上の支援金を集めて話題になったのです。
「ベア ジャパン」代表の山本未奈子さんに、日本における生理にまつわる課題や現状を伺いました。

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山本未奈子
NYの美容学校を卒業後、同校で教鞭を執る。拠点を日本に移し、2009年にMNC New York Inc.を設立。「日本で一番女性を幸せにする会社」をビジョンに掲げ、ビューティーブランドを展開。 2020年フェムテックブランド「Bé-A〈ベア〉」を設立し、 エシカルなものづくりで社会への貢献とともに、女性のエンパワメントにも注力する。著書多数。


クラウドファンディングで新記録を更新した超吸収型サニタリーショーツ


クラウドファンディング「キャンプファイヤー」に投稿した1本の記事。
それは女性のサニタリーライフを変えたいという思いで立ち上げた「Bé-A〈ベア〉」の超吸収型サニタリーショーツの製造と販売の支援を募る内容でした。

目標達成金額は100万円。

クラウドファンディングでサニタリー用品にまつわる商材を取り扱うケースもレアなため、目標達成金額設定の相場がわからず、「100万円売れたら上出来」と話していた山本さん。
それがスタートしてわずか数時間で目標金額を達成してしまったそうです。

「嬉しいよりも驚いた、というのが正直な感想です。この超吸収型サニタリーショーツを完成させるまで紆余曲折あり、製品化するまでの道のりは本当に苦労の連続でした。だから、まさかの反響に驚きました」(山本さん)。

この記事をきっかけに雑誌、ウェブ、テレビなどでも製品がたくさん紹介されるように。その結果、1億円以上の支援金を集めるという偉業を達成したのです。

 


60年前から変わらない生理の悩み


山本さんはロサンゼルスに住む共同代表の髙橋くみさんと2人でMNC New Yorkを立ち上げ、ビューティブランド「シンプリス」を展開しています。
起業した理由も「女性特有の悩みを製品や情報で解決し、女性が自分らしく活躍する社会を作りたい」という思いがあったから。

ある日、髙橋さんからアメリカの吸水性サニタリーショーツ市場の話を聞き、自分たちで開発・製品化できないか、と相談を受けたそうです。
「アメリカではすでに吸収性サニタリーショーツや類似した製品が出回っているけど、お世辞にも良いものとはいえなくて。
日本のサニタリー事情はさらに遅れていて、生理用品といえばナプキンとタンポンくらい。羽根つきのナプキンが発売されたのもつい30年ほど前のことなんです。

まずは社内でヒアリングをしたら、生理の悩みが実に多かった。しかも、その悩みは親や親しい友人でも共有されることなく、「仕方のないこと」として諦めるしかない。
このモヤモヤを娘たち世代に残していいのだろうか、と立ち上げたのが『Bé-A〈ベア〉』でした」(山本さん)。

ショーツの開発を誰と組む? どこにお願いする?運命的な出会い


やると決めたら納得する製品を作りたい、とモノ作りの夢は膨らむその一方で、製造メーカー選びは苦戦したとか。
「生理用商材や下着メーカーなどに飛び込み営業をしましたが惨敗。電話口で断られることもありました。そんな時、髙橋が『オムツや介護用のトレーニングパンツを作っているところなら可能性があるかも』と。確かに!って(笑)。

すぐに調べて、ベビー用肌着やシニア向け尿もれ下着を手がける会社や工場に連絡をしたのですが、ここでもなかなか 首を縦に振ってくださる方に出会えず。ようやく一社、アポを取り付けることができて希望の光が見えたのも束の間、要望の限りを伝えたところ、やはり最初は難色を示されました。”製品化は不可能に近い”との言葉をいただいたときは、また暗闇に立ち戻ったような気持ちでしたが、それでも、私たちと一緒に実現の可能性を信じ、挑戦することに覚悟を決めてくださいました。

開発段階で何度となく話し合いを続ける中で、次第に『無理だ』という発想ではなく、 『どうすれは実現できるか』だけを考えて皆で前進してこられたことが、今日につながっています」(山本さん)。

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担当者が男性という企業も多く、なかなか理解が得られないなか、たどりついた協業企業とは何度も打ち合わせを。

「Bé-A〈ベア〉」のショーツの特徴は圧倒的な吸収量。欧米の女性はタンポンの使用率が80%ですが、一方で日本は80%がナプキン派。だからこそ併用しなくとも、一枚穿くだけで一日中過ごせるだけの吸水量にとことんこだわったのです。

「量が多い2日目でも、通常の下着と同じ感覚で1日中穿いていられることが、他にはない圧倒的な強みとなっています。
ナプキンを取り替える時間がない人にも安心して過ごしていただけるよう、吸収量はどうしても譲れなかった。吸収体の部分は職人さんが手作業で丁寧に仕上げてくださっているんです」(山本さん)。

開発に費やしたのは2年半。
手元に届いたベア シグネチャー ショーツを試したお客さんからの評価は上々で、その期間中だけでなく、尿もれや更年期障害で悩む女性など、予想外のところまで使用の範囲が広がっているそう。

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ボクサー型の黒で、幅広い人が使えるデザイン

「特に、知的障がいを持つお子さんのお母さんとお話した時のことは印象に残っています。お嬢さんの生理が始まったけどご本人に生理という認識がないため、ナプキンの取り替えに苦労していたそうです。
ナプキンを嫌がり、ショーツも脱いでしまうことも。ベッドや壁にビニールを張って、対策をするなど、ご苦労があったそうです。そんな中、Bé-A〈ベア〉の超吸収型サニタリーショーツと出合い、お嬢さんがそのままショーツを穿いてくれるようになって、本当に助かっていると教えていただきました。

他にもトランスジェンダーの方からは『まわりの目があって生理用品を購入することが苦痛だった』『男性トイレには汚物入れがないので、いつも持ち帰っていた』などの悩みも聞くことができました。
このショーツがこんなにたくさんの方々の役に立てていると思うと嬉しかったですし、諦めずに最後まで作り上げてよかったと感じました。

その一方で『漏れる』『穿き心地が良くない』という声もいただきました。この2点は、重大な欠点だと感じたので、すぐに製品を検証し改良へと動きました。 そして、2021年3月、発売から7ヶ月を迎えたところで、より漏れにくい構造へとパーツを増やし、穿き心地についても仕様を調整したものへとアップデートした新モデルを発売しました。改善できることはする。お客さまの声を聞き、常にアップデートしていくブランドになりたいと考えています」(山本さん)。
 

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