いい人たちばかりの世界を束ねるヒロインは、当然のごとく純真なキャラでしたが、演者である井上真央の卓抜した演技力や名脚本家・岡田惠和の絶妙なさじ加減も手伝って嫌味がなく、多くの視聴者を引き込みました。

朝ドラ『おかえりモネ』とNiziUの共通点。いま、純真ヒロインが求められる理由_img0
2011年度前期の朝ドラ『おひさま』でヒロイン・陽子を演じた井上真央。写真は放送の翌年、2012年に開催された第25回東京国際映画祭での様子。写真:AP/アフロ

東日本大震災の直後に放送がスタートした本作は、被災地では視聴率が30%を記録したとか、食糧難を描いたエピソードを見た視聴者からそば粉が送られてきたとか、さまざまな伝説を残しています。筆者はこれらの現象と、『おひさま』を食い入るように見続けた自分を照らし合わせてある結論を導き出しました。それは、人は辛い時やここ一番のこらえどころでは、優しい気持ちにさせてくれるものを欲する、ということです。

 

そう考えると、現在旋風を巻き起こしているアイドルグループNiziUの人気ぶりにも合点がいきます。彼女たちは、長らくアイドルに縁のなかった中高年のファンも獲得しているそうですが、理由は彼女たちの純真さにあると筆者は考えています。その高度に磨き上げられたダンスや歌を目にすれば彼女たちの努力家ぶりは自ずと伝わってくるでしょうが、特筆すべきは、彼女たちが他人を蹴落として突き進む自分本位の頑張り屋ではなく、「皆で一緒に合格しようね」とライバル同士手を取り合って成長していくという、優しい頑張り屋さんであるという点です。

朝ドラ『おかえりモネ』とNiziUの共通点。いま、純真ヒロインが求められる理由_img1
オーディション番組放送中から、すでに多くのファンを獲得していたNiZiU。デビュー時にはメンバー9人の顔が並ぶビジュアルで街中をジャックした。写真:西村尚己/アフロ

オーディション番組『Nizi Project』ではその特徴がしっかりフィーチャーされていましたし、実際、プロデューサーのJ.Y.Parkは、選出に当たってパフォーマンススキルだけでなく人柄も重視したそうです。頑張り屋さんで他人を思いやることもできる、まさに純真な彼女たちだからこそコロナ禍で鬱屈とした多くの人の心を動かすことができたのでしょう。ここまで熱弁したのでお判りでしょうが、筆者もNiziUにハマっています。

デビュー前に配信された楽曲『Make you happy』は大ヒット。曲中 の“縄跳びダンス”が流行するなど社会現象に。

ようやく『おかえりモネ』に話を戻しますが、超難関である気象予報士の資格取得を目指して頑張るヒロインの姿が、純真を求める多くの視聴者を魅了するのではないかと思っています。ちなみに、NiziUで純真の良さを再確認した筆者は、『おひさま』の感動が10年ぶりによみがえるのではないかと密かに期待しています。スタート時の舞台が東日本大震災の被災地・気仙沼市であるというのも、浅からぬ縁を感じます。

耳にタコができるほど「純真」を連呼してしまいましたが、かつては絵空事だとバカにしていたこの言葉を素直に言えるようになった自分に人間的成長を感じています。もしかしたら朝ドラヒロインを受容できるかどうかって、大人になれたかどうかのバロメーターかもしれませんね。


構成/山崎 恵


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