腰痛は、確かに20〜30代と比べると、50代でその頻度が増加する可能性が示唆されていますが、一方で、60〜70代以降には再び頻度が減少に転じる可能性も示唆されています。つまり、必ずしも「老化」で説明できる症状ではありません。
腰椎椎間板ヘルニア発症のピークは30~40代
また、比較的若い人に多い病気というのもあります。例えば、腰椎椎間板ヘルニアです。この病気は50代以降で頻度が減少することが知られています(参考文献3)。
背骨は、重い体を支える支柱でありながら、体幹のしなやかな動きも生み出さなければなりません。このしなやかさを出し、クッションの働きをしているのが、「椎間板」と呼ばれる構造です。
この椎間板は、椎体と呼ばれる頑丈な骨の間、間にサンドイッチされる形で挟まっていて、柔らかいジャムが中に入ったマシュマロのような構造をしています。
普段はマシュマロの皮がしっかりとジャムを包んでいますが、何度も潰したり伸ばされたりを繰り返しているうちに、マシュマロの一部が破れてしまうことがあります。そうすると、中身のジャムがこぼれ出してしまいます。こぼれ出したジャムは、近くを走っている神経を圧迫してしまい、痛みを出すことになります。
ただし、この場合には、足に向かう神経が刺激されるので、太ももや足の方にも痛みが出たり、痺れ、力が入りにくいなどの症状を出したりすることもあります。このような点で、先の筋肉から来る腰痛と区別していくことになります。
この病気のピークは30~40代であり、20代でも発症する病気ですから、「老化のサイン」とは言い難いと思います。
参考文献
1 Deyo RA, Tsui-Wu YJ. Descriptive epidemiology of low-back pain and its related medical care in the United States. Spine (Phila Pa 1976) 1987; 12: 264–8.
2 Deyo RA, Weinstein JN. Low back pain. N Engl J Med 2001; 344: 363–70.
3 Jordan J, Konstantinou K, O’Dowd J. Herniated lumbar disc. BMJ Clin Evid 2011; 2011. /pmc/articles/PMC3275148/ (accessed May 17, 2021).
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