チェスキー氏は、出張がなくなるのではなく、テレワークと長期滞在を組み合わせる形で、旅行のひとつの形態になると予想しています。1泊や2泊の出張を何度も繰り返すのは効率が悪いですし、生活のリズムという点でもあまり良いことではありません。
たいていの打ち合わせはZoomなどで済んでしまいますから、1泊、2泊の慌ただしい出張というのは減っていく可能性が高いと思われます。短期の出張族をアテにしたビジネスというのは意外と多いですから、業種によっては大きな転換を迫られるかもしれません。
一方、夏休みなどを挟んで3カ月間テレワークをしながら別の場所に住むといった柔軟な働き方ができる企業は、今後、増えてくると予想されます。民泊を使って柔軟に長期滞在を行うというのは、ひとつの流れとして定着するのではないでしょうか。
このところテレワークの普及で、田舎に家を買う人が増えているという記事をよく目にしますが、現実にはそのような動きが特に顕著にはなっているわけではありません。家は一生の買い物ですから、資産価値の維持が最大の関心材料ですし、仕事の都合でいつ現場への出勤を命じられるのか事前に予想することは不可能です。賃貸ではなく持ち家であれば、利便性の高い場所に購入したいと考える人が圧倒的に多いでしょう。
テレワークで田舎に家を買うというのは、ある種の願望を元にした記事ということになりますが、民泊を使って長期滞在すれば、これに近いライフスタイルを実現することができます。日本人には抵抗があるかもしれませんが、自分が移住している間は本宅を別の人に貸すことでコストをほぼゼロにすることも不可能ではありません。
実際に家を買うという大きなリスクを背負うことなく、ある程度、柔軟な生活ができることを考えると、民泊を使った長期滞在というのは、現実的なソリューション(解決策)ではないでしょうか。
いずれにせよコロナ後においては、働き方も旅行のあり方も大きく変わりそうです。そして、この流れは全世界的なものですから、程度の違いこそあれ、日本にも影響が及んでくるでしょう。企業の中には、コロナ終息後は、完全に元のやり方に戻そうと考えているところもあるかもしれませんが、そうした発想は、場合によっては人材流出リスクにつながる可能性があります。
コロナ危機の最中に新卒で会社に入った人たちは、今の状態が標準ですから、従来のやり方を絶対視するということはあり得ません。またコロナ後であっても、新社会人になる若者の価値観は大きく変わっているはずです。企業は優秀な人材を引き留めるためにも、今以上に柔軟な働き方ができる体制を構築する必要がありそうです。
前回記事「「コロナ前には戻りたくない」は健全?社会のIT化で上がるリアルの価値 」はこちら>>
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