写真:ロイター/アフロ

このところオリンピック関係者の言動が社会から疑問視されるケースが相次いでいます。東京オリンピックはコロナ危機の影響をもっとも受けたイベントですから、そもそも批判が集まりやすいという状況ではありますが、旧態依然とした組織体質の問題を指摘する人もいます。

 

しかしながら、この問題は今に始まったことではありません。言動を批判されている組織上層部にいる人たちが若かった時代には、当時、上層部だった人たちから同じような扱いを受けていました。つまり、本来、被害者だった人はずの人たちも、組織の上に立つと、立場が逆になってしまうということであり、組織体質というのは何世代にもわたって再生産される可能性があることを示唆しています。

先日、日本オリンピック委員会(JOC)の経理部長が電車にはねられて死亡するという痛ましい出来事がありました。遺書などは見つかっていないそうですが、警察は現場の状況から飛び込み自殺とみているようです。これを受けてJOCの山下泰裕会長は、自殺ではなく事故死であると会見で強く主張したのですが、その言い方があまりにもデリカシーを欠いていたことからネットでは驚きの声が上がっています。

山下氏は「ご遺族は警察が自殺と認定していることに納得していない」、「頭の側面にしか(車両が)当たっていない。飛び込んだっていうのと全然違う」といった発言を行い、自殺説を強く否定しました。

自らがトップを務める組織の職員が亡くなったという話ですから、必要に応じてコメントすることもあるでしょう。当該案件については、職員の死と組織の裏金を関連付けた報道もあり、それを否定したかったということなのかもしれませんが、それにしても、具体的に体のどの部分が当たって死に至ったのかという非常にデリケートな話について、遺族ではない第三者が、公の場で一方的に自説を主張するというのはどう考えても社会常識を欠いています。

説明するまでもなく山下氏は、1984年に開催されたロサンゼルス五輪の金メダリストであり、多くの日本人にとってヒーローとも言うべき存在です。こうした人物から、あのような言葉が出てきたことにショックを受けた人も多いのではないでしょうか。


五輪関係では、東京五輪・パラリンピック組織委員会前会長の森喜朗氏が女性蔑視発言を行って大きな批判を浴びましたし、後任として会長に就任した橋本聖子氏も、過去のセクハラ問題について取り沙汰されたことがありました(橋本氏は、強制した事実はないとしていますが、行動については当時も今も深く反省をしていると説明しています)。


一連の言動は個人の問題であり、受け止め方によって差があるのも事実ですが、一部からは、スポーツ界独特の組織体質に原因があるとの指摘も出ているようです。筆者もその可能性が否定できないと思っているのですが、そう考える理由は、スポーツ界では過去にも同じような問題が繰り返し、指摘されてきたからです。

 
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