ミモレのコミュニティ〔ミモレ編集室〕のメンバーが、“SDGsネイティブ”のZ世代(概ね1996年頃〜2015年頃生まれ)が牽引するプロジェクトを取材し、私たちが今できることについて、一人称の問題意識で考えます。
世界では今も飢餓で苦しむ人がいる一方、ゆたかな国でのフードロスやファッションの大量廃棄問題は深刻。食品や衣料の大量廃棄への対応は、”SDGsの目標12:つくる責任 つかう責任”の達成にも不可欠です。不揃いの野菜や着なくなった服を消費者に届けるビジネスを始めた二人の若き起業家にお話を伺いました。大量消費に頼らないゆたかさを実現するため、あたらしい消費のヒントをお届けします。
台風でキズだらけになったきゅうりを売り切る
タベモノガタリ株式会社 社長 竹下友里絵さん
1996年生まれ、神戸市出身。高校生のとき留学先で、フードロスを目の当たりにしたきっかけから、大学在学中にタベモノガタリ株式会社を設立。現在はその第一事業として、神戸近郊の野菜を扱う『八百屋のタケシタ』を運営し、これからの農業を創るための流通の構築を目指しています。
「数年前、台風の被害でキズだらけになったきゅうり約800本の収穫イベントをやったんです。台風でビニールハウスは破れ、農家さんは精神的にまいっていました。ふだんから農家さんにお世話になっている身として、こんなときこそ力にならないと! と思いました。完売できたこともうれしかったのですが、お客さんからかけてもらった『タケシタを応援しとるで』という言葉に、『がんばってよかった!』と心から思いました」
関西弁まじりでそう語るのは、”世界人口が毎日「おいしい!」で満たされた世界の実現”を目指し、フードロス削減ビジネスを手がける竹下友里絵さん。インタビュー当日、モニター越しにあらわれたのは、パワフルな笑顔が印象的な25歳でした。竹下さんの親御さんと同年代の〔ミモレ編集室〕メンバー、”たにちゃん”が、親世代として、消費者としてお話を伺いました。
八百屋のタケシタには、味が良くても見た目が悪い、形が揃っていないなどの理由で弾かれ、流通の枠にはまらなかった野菜が集まります。竹下さん自身が農場まで足を運び、栽培方法から食味までを確かめた厳選品です。
「野菜は形を揃えた方が運ぶのに効率が良いため、形が悪くて規格にはまらない野菜は廃棄されてしまいます。八百屋のタケシタではそれらすべてを“規格不選別”で販売しています」
「30~40代の方にとって、野菜はスーパーで買うのが当たり前なのだと思いますが、野菜を買える場所は、産直販売をする農家や直売所、道の駅などたくさんあります。今はオンライン宅配も充実しているのに、スーパーの野菜だけ見て選ぶのはもったいない。それもあって最近は、スーパーの中に八百屋のタケシタのコーナーを置く販売スタイルに力を入れています。都市部の人も”野菜を選ぶ”という体験をたくさんしてほしいですね」
八百屋のタケシタの野菜は、神戸・名谷駅ナカの直営店の他、神戸市内のスーパー・トーホーストアの一部店舗で購入できます。
今日から始めるフードロス削減
「今ある問題というのは、高度経済成長期には効率化を優先させるなど、それぞれの時代でベストを尽くしてきた結果です。私たちの世代は、上の世代を非難するより何もかもがハッピーな社会のためにがんばろう! って思っています」
と語る竹下さんにフードロスを減らすために私たちができることを伺ってみました。
「シンプルに家で食品を捨てないことです。冷蔵庫に残りがあるのを忘れてまた買うとか、特売日だから余分な量を買うことをやめましょう。湯がいて冷凍保存するなど、長持ちさせる工夫もおすすめです。ムダなものは買わず、買ったものをムダにしなければ、それだけでも十分フードロス削減につながると思いますよ」
野菜の価値は形や大きさで決まるのでしょうか。旬の野菜は栄養価が高いこと、自然の恵みをいっぱいに受けた野菜はおいしいということを、もっと知って欲しいと竹下さんは訴えます。
昼は通常業務、夜は広報をかねたインスタライブ、休日はイベント登壇など多忙な竹下さんは、農場に出向いたり売り場に立ったりすることもあるので、動きやすいTシャツとスニーカーが定番スタイル。仕事着のまま応じてくれたインタビューでは、終始気さくな語り口ながら、まっすぐに見つめ返す目や相手の話を静かに聞く姿勢から、人としての深みと経営者としての貫禄が伝わってきました。
竹下さんのインスタライブはこちらでチェック↓
八百屋のタケシタ Instagram: @yaoyanotakeshita
続いては、着なくなった服を新しい持ち主に届けるユニークな試みをご紹介します。
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