ええい!と家のモノを投げたくなることもある


2008年に母親になって以降は、母親役を多くやるようになった富田さん。特にここ数年は、大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』を筆頭に、「母親役しかやってない、と言っていいくらい」と笑います。日常生活はそのまま演技に生かされているようです。

 

「自分から出ているもので演じているので、どんなに毒を吐いてしまうお母さんでも、どんなに穏やかでトボケたお母さんでも『うわ似てる』って思うことはありますね。『35歳の少女』の時にモノを投げて暴れる場面があったのですが、私も『ええい!』と家のモノを投げたことがありますね。当たっても痛くない程度のものを、当たらない程度に。そして部屋を汚さない程度に。結局掃除するのは自分なので(笑)。これがまた、うちの子供が厳しくて。お弁当でも、ちょっと手抜きをするとーー例えばプチトマトとかブロッコリで隙間を埋めたりすると、見事に残してくるんです。そのままじゃなく、もう一声!みたいに思うみたいで。イヤだ、バレた?と思うんですけど、同時に、ふつう食べるでしょ!お母さんに悪いと思うなら!って」

 

家事をして、仕事をして、子育てをして、それでもなお厳しく評価されがちな「お母さん」。そこにがんじがらめになってしまう人も少なからずいるかも知れません。でも富田さんはいたって軽やかに「お母さんも、もうちょっとわがままでもいいんじゃないか」と語ります。

 

「私は子供よりも先に寝ちゃうんですよ。以前は子供を寝かせてからと思ってたんですが、もう子供も中学生だし、最近は付き合ってたらこっちが身が持たなので。私が朝型人間なのを知っているから、子供も子供なりに『わかった』と気を使ってくれるし。子供が寝ないからって親が起きている必要ないし、親が寝れば子供もいつか寝るでしょう。

娘が中学に入ってトゲトゲし始めてからは、そう考えるようになりました。私まで同じように反応してしまうと引くに引けなくなるし、向こうが親離れようとしてるなら、私もそろそろ子離れの時期かなと思ったんですよね。テストでどんな点数をとってこようが、お弁当残してこようが、それはそれでとりあえず受けとめて、私は私のことをやるし、あなたはあなたのことをやる。子供にとってはトゲトゲする時期も必要なんだろうし、大人になってからトゲトゲされても困りますものね。もちろんまだ子供なんだけど子供扱いはせず、『自分で責任持ってやってください』とちょっと距離をとる。トゲトゲは変わらないけれど、自分でコントロールするようにもなってきたので、一人前に扱ってほしかったんだな、ってことはすごく思いました」

時には自分が演じた「お母さん役」に学ぶことも。『モコミ~彼女がちょっと変だけど』の毒母・鈴木千華子役がそれです。

「モコミの母親は手をかけすぎてはダメっていう反面教師ですね。どんな結果になろうと、本人にやらせるべき時期が確実にあるんです。でも千華子は“全部やってあげること=お母さん”だと思いこみ、お互いに依存し合って関係をこじらせてしまったから。娘としゃべるときは、彼女を思い出して、今は私が口を出していいところだよな、OK、OK、と、確認したりしています。最終的に自分が片付けることになると思うと、お母さんって先回りして手を出してしまうんですよね。でもそこを耐える。部屋が汚くても、お弁当の残りがカバンの中で発酵しそうでも、本人が動くまでじっと我慢(笑)。『お母さんごめん』って出してきたら、次は『ちゃんと自分で洗って』って言えるかどうか」