自らもDVサバイバーでシングルマザーのソーシャルライター・松本愛さんが、DV当事者の「声」を丹念に拾い上げ、日本のジェンダー意識の遅れの実態をレポートする『DVアリ地獄』第17回です。

※個人の特定を避けるためエピソードには脚色を加えている場合もあります

 


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離婚後、父母間で合意形成することの難しさ


別れた夫から殺されかけるようなDVにあっても、面会交流中に娘が父親から性被害にあっても面会を継続するよう言われることが珍しくない家裁の異常な運用。それが今まで問題とされず、全く表に出てこなかったこと。

そしてDVと虐待はセットであること。

このことを私が知ったキッカケは自らの離婚経験と、知人の体験、そして昨今、新聞等で取り上げられるようになっている「共同<親権>運動」でした。

そもそも親権とは、子どもの財産管理権(子どもの財産の管理、また子どもの法律行為に対する同意権)と身上監護権(身分行為の代理権・居住指定権・懲戒権)。つまりは、子どもの住む場所や、就学・就職先、お金の管理等全てに干渉できる強い権利。それを離婚するような二人が共同で持ち、お互いの合意がないと決められなくする法律、それが「共同親権」。子どもが犠牲になることは明白です。

この「共同親権」ですが、元々は「親子断絶防止法」という名前で行われていた運動でした。2017年の国会で「父母の離婚等の後における子と父母との継続的な関係の維持等の促進に関する法律案」を提出予定でしたが、関係各所から反対意見が噴出し見送りとなった曰く付きの法律だったのです。

何故なら上記の法案は「離婚により子どもに会えない」と主張する父親たちによる、「今まで以上の面会交流の強制」と「共同親権」を求める内容だったため。

しかしこれまで本連載でお伝えしてきた通り、2011年に民法766条の一部改正において“離婚時に面会交流の取決めを協議で決める”と定められて以降、面会交流はほぼ強制。
DVの有無は「面会と関係ない」と認められず、子どもが「会いたくない」と言っても間接強制の対象となる、そんな現状がまかり通っている中で、さらに面会の強制力を強める「親子断絶防止法」。そして、別れた父母が“共同で親権”を持つということ。あまりにも無理があるだろうと当時も判断されたのでした。

 

その上、DVから命からがら逃げ出しても面会交流さえ避けらない被害者に対し、加害者がそんな強権を持ったらどうなるか。

婚姻中の家事育児負担も養育費の支払い率も2割ほど、もはや育児放棄と言っても過言ではない多くの日本人の父親にそんな権利は必要あるのか。

そしてジェンダーギャップ指数156カ国中120位(2021年)の日本の、DVに対する認識の甘さがどれほどのものか。

知っていただくためにも、殺されかけても面会交流させられているDさんのケースをご紹介しましょう。

 
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