夢中になれるドラマをいつでも探し中のあなたへ、テレビから配信系までカバーするコラムニスト長谷川朋子が、好みのドラマ別に次にハマれる作品を独断と偏見でオススメする“はせともマッチング”。今回はメキシコ発の隣人トラブルドラマをご紹介します。

隣人トラブルを話題にしたドラマと言えば、日本はミステリーが定番。原田知世と田中圭主演の『あなたの番です』(2019年、日テレ系)では引っ越した先で次々と謎の殺人事件が起こりました。メキシコ発『お隣さん戦争』も隣人トラブルが次々と勃発しますが、流れるムードは情熱的でお気軽なラテンノリ。超セレブタウンに住む仲の悪い2つの家族が面倒を起こしながら、愛と笑いを届ける。そんなコメディファミリードラマの新作がNetflixで配信中です。

『お隣さん戦争』Netflix独占配信中!


愛に溢れた貧乏一家VS愛が欠落したお金持ち一家


こんな隣人は絶対に避けたい。ドラマ『あな番』に、女の闇を描いた菅野美穂主演の『砂の塔』(2016年、TBS系)、そして仲間由紀恵が狂気的な隣人の役を演じた『美しい隣人』(2011年、フジテレビ系)でも思ったことでした。これら恐怖が迫ってくるストーリーとはだいぶ無縁ですが、Netflixメキシコオリジナルシリーズの『お隣さん戦争』も引っ越し早々、戦いの火蓋が切られます。

いがみ合う家族は愛に溢れた3世代の貧乏一家と、愛が欠落した白人の富裕層。貧乏一家が超セレブタウンに住めることになったのは、タクシー運転手で生計を立てる肝っ玉母さんのレオノール(バネッサ・バウチェ)が訳アリ抽選くじで大当たりを引き当てたから。プール付きの夢の豪邸暮らしに大喜びでラテンダンスを踊るもつかの間、お隣さんはレオノールの因縁の相手、セレブ妻のシルビア(アナ・ライェブスカ)であることがわかると、互いに家族を守るため、メキシコ女たちの仁義なき戦いが始まります。

肝っ玉母さんのレオノール(バネッサ・バウチェ)と手前のセレブ妻のシルビア(アナ・ライェブスカ)。©NETFLIX

コメディドラマですから、2人の小競り合いはおバカで笑えてしまうもの。一緒に住むレオノールの弟は前科者ですし、お国柄ゆえ犯罪事件の匂いをぷんぷんさせるものの、いつでもユーモアたっぷりです。健康的で明るくたくましいラテン女のレオノールに対し、シルビアはスピリチュアル好きで神経質という一見まったく正反対の2人がやがて、互いが似た者同士であることに気づいていくのも微笑ましい。父親同士も、子どもたち同士もそれぞれ共通点を見つけていきます。

 


太陽が燦燦と降り注ぐメキシコの街のようにカラっとした後味


引っ越してこなければ、関わることはなかった格差ある2つの家族。階層も肌の色も違う対照的な隣人家族の構図こそ、このドラマの見どころです。Netflixドラマで共通する差別社会に対して皮肉を込めた台詞が満載なのです。

例えば、レオノールは「裕福な人は全てを貧しい人のせいにする」と言い放ち、シルビアは「貧しい人は自分勝手」と主張します。

ラテンミュージックとメキシコのセレブ住宅事情も見どころ。©NETFLIX

なかなかその溝を埋めるのには時間がかかりそうですが、互いの家族が学び、距離を縮めながら成長していく姿を観ていると、あったかい気持ちになれます。しかも、太陽が燦燦と降り注ぐメキシコの街の雰囲気そのままに、カラっとした後味です。毎話エンディングで流れるラテンミュージックがその余韻を引っ張ってもくれます。

脚本の良さはNetflixメキシコ発ドラマのヒット作のひとつ『母と母と娘』と同じクリエイティブチームが手掛けていることからも納得。本作ではフェルナンド・サリニャーナとカロリーナ・リベラの夫妻がタッグを組みながら、2人で脚本を手掛け、全体をプロデュースしています。

全8話(各話約30分)が2021年7月7日に初公開されてまだ間もないのですが、早くもシーズン2を待ち望む声が上がっています。日本ではまだ馴染みのないメキシコドラマですが、家族をテーマにしたラテンパワー炸裂の痛快コメディに元気をもらえること間違いなしです。
 

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