一番辛いのは別居期間だった
「探偵を雇おうと思いましたが、弁護士の友人にあまりお勧めできないと言われました。法外な値段を払っても、訴訟に有効な証拠を集められる可能性は低いそうです。仮に証拠が揃っても、労力に対して手に入る慰謝料はたかがしれていると。
1ミリでも彼を信じたい気持ちがあるなら、真実を知るのが必ずしも正解とは限らないと言ってくれた友人もいました。結局調査をするのはやめました。それから3ヶ月の別居生活の間に、今後のことを考えましたが、もう悩むのにも疲れてしまって、結局離婚を受け入れたんです」
真実をうやむやにしたまま現在に至りますが、別居期間3ヶ月で離婚してしまったことに後悔はないそうです。
「なぜなら、一番辛かったのが、離婚後よりもあの別居期間の3ヶ月なんです。もしかしたら帰ってきてくれるかもしれないと期待したり、やっぱりもう二度と戻ってこないかもしれないと絶望したり……。彼を疑ったり、やっぱり信じてみようと思ったり。その時期は地獄のようだったから、別れてからの方が楽になれました。もちろん立ち直るのは簡単ではなかったですが」
由梨さん曰く、離婚において何が最も苦しかったかというと、感情の振れ幅が大きすぎて自分でも制御できないことだそう。
「感情が次々と変化していくんです。ひたすら悲しみにくれる期間が続くと、それがやがて怒りに変わり、“あんな人とは別れて正解だった”と開き直るようになります。ところがしばらくすると今度は“どうして彼を大切にできなかったんだろう”と自分を責め始めて……。これがグルグルと永久に繰り返され、自分の感情に振り回されてヘトヘトでした」
心に傷を負った代わりに手に入れたもの
離婚から1年半経った今は、ごくたまに思い出して胸が痛む程度になったという由梨さん。「離婚して幸せになったか?」と尋ねられたら、由梨さんはどう答えるのでしょうか。
「心から愛した相手だったし、やっぱり離婚はしたくなかった。だから今の方が幸せかと聞かれたら、現段階ではそうとは言えません」
しかし、離婚して良かったこともいくつかあったといいます。まず一つ目は、自分らしさを取り戻せたこと。
「彼からは金銭感覚が違うなんて言われてしまいましたが、これでもかなり抑えていたんですよ。買った洋服もクローゼットに隠していたりとか(笑)。だから自分を偽らなくなったのはよかったです」
そして二つ目は、絶縁状態だった両親と仲直りしたことだそうです。これは大きな変化だったのではないでしょうか。
「親もあっさり受け入れてくれました。心の中では『だから言ったのに』と思っていると思いますが、何も言わずにいてくれたところに愛を感じました。結局、親の不安が的中した形になりましたね」
そう言って苦笑いする由梨さんですが、離婚を通じて、人間として大きく成長できたと思う、とキッパリ語ってくれました。
「ここまでお話したとおり、私にとって離婚はとても苦しい出来事でした。でもこうやって乗り越えてきたことで、ずいぶんメンタルを鍛えられました。今後は少しのことではくじけないと思います」
由梨さんのように、離婚によって深い心の傷を追い、立ち直るために相当の苦労をする方は多いでしょう。しかし彼女のエピソードは、失ったものの代わりに、得られるものが必ずあるのだと希望を持たせてくれました。
もしも現在、渦中にいて苦しんでいる方がいたら、未来は必ず今よりも明るいのだと信じてもらいたいです。
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