シェアするのは「ポジティブな感情」
自分の経験や感じたことを伝えるとき、気を付けるべきことはなんでしょうか。
「仲間を増やすには、ポジティブな感情をシェアすることです。『この本を読まないとダメ』『これを知らないと置いていかれるよ』ではなくて、『これ面白かったよ』『こんな素敵な活動をしている人たちがいて、応援しているんだ』というような伝え方ですね。ジェンダー平等は、日本ではなかなか進まなくてもどかしいこともあります。焦る気持ちはあると思いますが、身近な人に自分が感じたことを話すだけでも、世の中を変えることに繋がるんです。専門家やヒーローが世の中を変えるのを待つのではなく、人びとが緩やかに連帯することで、案外社会は早く変わります。自分が学んだことや気づいたことをちょっとずつ周囲とシェアして、人と情報を繋ぐハブになるという意識を持つことが大事ではないでしょうか」
シェアすることだったら自分にもできる気がします!
「そうですよね。それに、専門家じゃないこと、つまり『分からない』ことは強みでもあるんです。分からない人の気持ちが分かるから、『どうすれば理解しやすく伝えられるだろうか』と考えることができますよね? 普段使いの言葉で考える人は、研究者やジャーナリストのような専門家よりも、親しみやすい表現ができるという利点があるんです」
小島慶子=ソーシャルコミュニケーター=くまモン?
「私はずっと、エッセイスト・タレントという肩書にしっくりきていなくて……。文章を書いたりテレビやラジオで話したり、NPOのイベントで発言したり、アンバサダーを務めたり、この色々やっている感じをぴったり表せる肩書を探していて出会った言葉が『ソーシャルコミュニケーター』。簡単に言うと、NPOや自治体、企業などの組織の活動について、分かりやすく親しみやすく世間の人に伝える役割。私の場合は、それをSDGsの分野でやっているんだな、と気がつきました。ちなみに、日本で最強のソーシャルコミュニケーターは、『くまモン』です(笑)!」
「小島さんがくまモン?!」とZoomのチャットでざわつく参加者たち(笑)。
「くまモンが表舞台で活動することで、キャラクターへの注目を入り口にして、熊本県のことを知る人が増えますよね。くまモンがきっかけで、熊本地震や水害の時に『支援したい』と思った人も多いはずです。私は、ジェンダー平等や貧困対策、気候変動への取り組みなど、自分が大切だと思うSDGsの課題について一人称で発信してきました。さらに、そうした課題に取り組んでいる団体の活動を世の中に紹介したり、自治体のジェンダー平等の施策を応援したりする活動をしています。入口は『テレビで見たことがある小島慶子の話を聞いてみたいな』という軽い気持ちで、人びとがそうした社会課題に関心を持つきっかけを作れたらいいなと思っています。だから、ああ私、くまモンだったんだと(笑)。そしてこれは、どんな人でもできることです。家族や友人など自分がいるコミュニティの中で、興味を持った社会課題について感じたことや経験をシェアし、小さなソーシャルコミュニケーターになれるのではないでしょうか」
「喜びも痛みも、他人が量ることはできない。あなたのささやかな経験は、尊重されるべきものなんだよと伝えたい」
講義の最後、小島さんが参加者へのメッセージとしてお話してくれたことを聞いて、涙する参加メンバーも。ジェンダー平等のような根深い社会問題に対して当事者意識をもつことはとても難しいことのようですが、自分の心も相手の心も尊重することに繋がるのだなということがよく分かりました。
いかがでしたでしょうか。〔ミモレ編集室〕の編集・ライティング講座は月一回開催。毎回豪華ゲストをお迎えして、「伝えること」をテーマに講義をいただいています。そこで学べることは、私たちの日常にすぐ生かせるものばかり。面白そうだな、と思った方、是非〔ミモレ編集室〕を覗いてみてください。
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奏さん
皆さんはじめまして。都内で会社員をしている奏(かな)です。
本も漫画も雑誌も好き。子供の頃から筋金入りの活字の虫です。
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