30分近く話を聞いてくれた保健所の姉御


え……ちょっと待って。この状態ではとっても双子を残して家を出るなんて現実的でない。保健所の方に「すいません……」と前置きした上で状況を説明します。

 

「夫も双子も心配なので家に残りたい。でも先日もお伝えした通り、次男はその後も良好なのでひとりで入院させる決心はどうしても出来ない。入院しなくてはいけない決まりだということは重々承知しているし、未知のウイルスだから急変したらどうしようという恐怖もある。ここで見送っていいのかという迷いもある。でも出来ればこのまま家族全員で家にいたいというのが本心です」……と。

もう本当にコロコロ状況が変わって申し訳ないのですが、我が家の相談があまりにも流動的なため、ついには上席っぽい方がお出ましになりました。

上席っぽい方、電話口でも姉御感がビシビシと伝わってくる方でした。余談ですがかなり多くの職員さんからお電話をいただいてきましたが、私がお話した方は皆さん女性でした。きっとお母さんの方も多かったのだろうなと推察します。

「お母さんね、とっても気持ちわかるよ。でもね、私は保健所の人間だから急変する可能性を視野に入れて、もしもを未然に防ぐための話し方をしないといけないので、そう思って聞いてくださいね。今かなり医療体制が逼迫してきていて、救急車を呼んでも乳児をすぐに診てくれる病院が見つからない可能性もあるんだ。明日から4連休でしょう。保健所も閉まってしまう。今回入れる病院は遠方ではあるけど(23区外の病院でした)都内でも有数の小児医療に強い病院なんだ。赤ちゃんの扱いにも慣れているから安心して預けていいと思います。でも、お母さんが納得していないのに無理矢理引き剥がすことは私たちにも出来ないです」

決して誘導するようなことも、脅すようなことも、見放すようなこともなく、30分近く時間をかけて会話してくれました。

決断するのは私。この決断によって後悔するようなことが待ち受けていたらという恐怖。涙が頬をつたいます。

「でもやっぱり息子をひとりで行かせる決心はどうしてもできません。後追いも始まり、『ママ! ママ!』と言っている今、私もいなくて、当然おっぱいもなくてとなると1週間ずっと泣きっぱなしになってしまうと思います。ごはんも慣れたものでないと根気よくあげないと食べてくれない。そうなると今よりも衰弱してしまう気がしてどうしても心配なんです。自己責任だということは十分理解していますので、どうか自宅療養ということにさせてください」と腹を括って伝えました。

姉御は「うんうん、お母さんわかったよ。私は医者じゃないので今ここでいいですよとは言えないの。これから所内で医師も交えてその方向で相談しますので、ちょっとお時間くださいね」と言って会話を終えました。

そしてその晩、次男の自宅療養が決まりました。

みんなが寝静まると今日からは子ども3人に加えて夫の安否確認も必要になりました。こんなに元気がなくなってしまうなんて。一体あとどれくらいで元気になるのだろうか。普通の風邪ではない、コロナの怖さを実感しました。