米倉涼子さんが見た、最新のおすすめエンタメ情報をお届けします。
今回紹介する『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』はタイトル通り、本人がこれまでのキャリアについて語るドキュメンタリー映画。
私も肩のデザインが特徴的なマルジェラのジャケットや、MM6のアイテムなどを持っています。
彼が顔は出さずに声だけで出演している作品なのですが、引退してから10年以上たっても公の場に現れないスタイルを徹底しているのは本当にすごいこと。
カール・ラガーフェルドのように自分が前に出るタイプのデザイナーもいますが、きっとマルジェラは自分の哲学が反映されたデザインだけで認められたいという純粋な思いが強い人なんでしょうね。
そのやり方を貫いて成功したからこその説得力のあるエピソードがたくさん登場します。
そのひとつが、ブランドやデザイナーの名前を記さず、四隅を縫い付けただけの白い布のタグの誕生秘話。
服そのものを見てほしいという思いから生まれたものなのに、結果的には逆に一目でマルジェラとわかるタグとして注目を集めることになっていますよね。
マルジェラ本人は、そんな皮肉なことを予想していたのかどうか……。モデルの顔を布で覆う方法からも、服だけに注目してほしいという思いが伝わってきました。
でもトルソーではないのだから、顔を見せずにランウェイを歩いたモデルの人たちは、どんな気持ちだったのだろう? ということも気になりました。
小さい頃にバービー人形のお洋服を作っていたことや、川久保玲さんをはじめとする日本のデザイナーからの影響とタビブーツが生まれた舞台裏。
そしてゴルチエのアシスタントだったことも、この映画で初めて知りました!
今FENDIのアンバサダーを務めていて、ブランドの哲学やデザインが形になるまでのプロセスにも、より興味が湧いているところなんです。
ブランドだけではなく、交代していくデザイナーを追いかけるとファッションがもっと楽しくなりそう。“あのブランドだから”ではなく“あのデザイナーの時代のものだから”と思うと、さらに愛着がわきますよね。
自分が素敵だと思う洋服は手ばなさず、大事に着続けたいと思っています。
<映画情報>
『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』
全国順次公開中
渋谷ホワイトシネクイント、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか
日本でもタビブーツを筆頭に、多くのファンがいるマルタン・マルジェラ。
キャリアを通して一切公の場に姿を現さず、あらゆる取材や撮影を断り続け匿名性を貫いた。
『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』を手がけたライナー・ホルツェマー監督は、マルジェラ本人の信頼を勝ち取り、「このドキュメンタリーのためだけ」のドローイングや膨大なメモ、初めて自分で作った服などプライベートな記録を初公開。51歳にして突然の引退をするまでのキャリアやクリエイティビティについて、マルジェラ自身が語った貴重なドキュメンタリー。
監督・脚本・撮影:ライナー・ホルツェマー(『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』)
撮影:トゥーン・イレハム/編集:ヘルマー・ユングマン/音楽:dEUS
出演:マルタン・マルジェラ(声のみ)、ジャン=ポール・ゴルチエ、カリーヌ・ロワトフェルド、リドヴィッジ・エデルコート、キャシー・ホリン、オリヴィエ・サイヤールほか
日本語字幕:額賀深雪
配給・宣伝:アップリンク
■公式サイト https://www.uplink.co.jp/margiela
■公式Twitter https://twitter.com/MargielaMovieJP
■公式facebook https://facebook.com/MargielaMovieJP
構成/片岡千晶(編集部)
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