刑法の厳罰化という形でしか基本的人権が守られないというのは、先進国としては本当に恥ずかしいことですが、これが日本の現実です。それと同時に、基本的人権というのは、法律だけで守るものではないということについても私たちは理解しておく必要があると思います。なぜなら、民主国家においては私たち国民が主権者ですから、私たち自身にも他人の権利を守る義務が生じるからです。

侮辱罪の罰則強化へ。中傷を「言論の自由」「有名税」という主張が完全にアウトといえるワケ_img0
 

日本では、常軌を逸した誹謗中傷に対して見て見ぬフリをする人も多く、こうした態度が加害者を調子に乗らせているという現実があります。企業のクレーマー対策もそうですが、自分が被害者でなければそれでよい、面倒だから、といった理由で、責任者が毅然とした態度を取らず、これが現場で対応する社員の被害を拡大させているという面があることは否定できません。

 

一部のネット企業は、犯罪レベルの誹謗中傷がコメント欄に多数、掲載されているにもかかわらず、PV(ページビュー、閲覧数のこと)を稼げるからという理由で意図的にこれを放置しています。これは言論の自由とはまったく別次元の話であり、こうした行為を平然と行う企業に対しては、私たちはもっと厳しい姿勢で臨むべきでしょう。

トラブルに関わるのは確かに面倒で大変なことではありますが、自分さえよければ他人が傷ついても構わないというのは、民主主義には沿わない価値観だということについて再認識する必要があると思います。

一部では、差別発言などに対して、積極的に政府が関与して抑制すべきだという考え方も勢いを増しているようですが、言論に対する政府の介入は本来、最小限にとどめるべきものであり、やり過ぎれば別の問題を発生させるリスクがあります。今回は、司法における厳罰化ですが、この範囲の対策で問題が解決することを筆者は切に望んでいます。
 


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