人種とジェンダー、耐え難い二重の抑圧

誰もが「レイシスト」になり得る。ありふれた差別を容認しないために必要なこと_img0
 

このシングル・ペアレント世帯についての報告は、黒人女性のシングルマザーたちに対して、根拠も検証もない以下のような「前提」を、人々の意識に植え付けることになりました。

 


・一人の良い親よりも二人の悪い親のほうが望ましい
・虐待をする黒人の父親でも子供にとっていないよりはまし
・両親が共働きをして収入源が二つあるのは子供にとって無条件に良い
・シングル・ペアレントは全員黒人の女性である
・不在の父親は刑務所にいるわけではないし、死んだわけでもない
・黒人の母親は児童手当てを受けとるために黒人の父親がいることを隠したりしていない

 

かつて、自分たちもジェンダー差別を受けた経験がある著者の両親たちでさえ、若くして未婚の母親となる“黒人女性の性”を取り締まろうとする人種を超えた運動に、参加せずにはいられなかったといいます。
 

母と父、そしておおぜいのアメリカ人は、人種問題の現実とは乖離した考えのもとで、よってたかってシングルマザーを悪者扱いしようとした。彼女たちを擁護したのは、ドロシー・ロバーツやアンジェラ・デイヴィスのような黒人フェミニストだけだった。
(中略)
当時の黒人フェミニストたちは、“黒人女性の活動家としての大きな役割は、夫に仕え、「黒人国家」のために黒人の子供をたくさん産むことだ”という黒人の家父長的な考えを否定した。

 

フェミニストで活動家のフランシス・ビールは、1968年に「アメリカの黒人女性は“奴隷の奴隷”と言われてもしかたがない」存在で、レイシズムと性差別の「二重の危険」の犠牲者であると宣言し、抑圧の悲惨さを訴えたそうです。