認知症の薬が不眠症を誘引


薬が不眠症の原因になることもあります。

先日、私の外来に不眠の訴えで受診した患者さんがいました。ここ数週間悪夢を見るようになり、うまく寝つけたと思っても夜うなされて目覚めてしまい、その後なかなか寝つけないので睡眠薬が欲しいとのことでした。

ここで、「それは大変でしたね。すぐに睡眠薬を出しましょう」とスムーズに言ってくれる医師が良い医師だと感じられてしまうかもしれませんが、そうではありません。

患者さんに様々な質問を投げかける中で、「最近始められた薬はありませんか?」と尋ねたところ、最近認知症と診断されてドネペジルという薬を始めたとのことでした。また、ドネペジルは、他の薬とともに夜寝る前に飲むよう指導されたと教えてくれました。

この時、私の頭の中のランプが点滅し始めました。ドネペジルという薬が、不眠症や悪夢の原因になりうることを知っていたからです。

 

患者さんとその後、ドネペジルを朝飲むようなタイミングにずらす方法や、薬を減らしてみる方法、薬を変更する方法などがあることを伝え、まずは薬を飲む時間を朝に変更してみることになりました。

 

数週間後、再度お会いした時には、悪夢を見なくなり、よく眠れるようになったと笑顔で話をしてくれました。この方の場合、睡眠剤を追加するのではなく、ただ一つ薬を飲むタイミングを変更するだけで問題が解決したのです。

このように、新たに睡眠薬を追加するのではなく、すでに飲んでいる薬を変更する、薬をやめるというかたちで問題が解決することもあります。足し算ばかりではなく、引き算を考えることも大切だということを教えてくれたといえます。


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参考文献
1 O’Keeffe ST, Gavin K, Lavan JN. Iron status and restless legs syndrome in the elderly. Age Ageing 1994; 23: 200–3.

構成/中川明紀
写真/shutterstock

 
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