新築の巨大タワーマンションを舞台に、ママ友同士の過酷な人間関係を描いた漫画『おちたらおわり』。2019年6月から連載が始まり、10月13日には6巻が発売されました。タワーマンションは階数によって販売価格が変わるため、どのフロアに住んでいるかでだいたいの収入や生活水準が想像しやすいこともあり、“階層カースト”なるものが存在している、と言われています(実際のところは謎ですが)。連載当初から、タワーマンション住民のママ友たちの昼ドラ的ドロドロ人間関係やバトルに注目が集まっていましたが、巻を重ねるごとに、さらにすさまじいことになっています!

まずは『おちたらおわり』のあらすじを振り返っておきましょう。
主人公は結婚5年目で36歳の月島明日海(あすみ)。在宅でイラストレーターをしており、人材会社に勤める夫の航平と、アレルギーを持っている3歳の娘・杏(あん)と暮らしています。杏の幼稚園や病院に近く、安心して子育てできる環境を求めて、運河を一望できる新築のタワーマンション「キャナルタワー羽浪(はなみ)」に念願のマイホームを購入しました。

 

いよいよ新しい生活が始まりますが、幼稚園が近いこともあり、引っ越し早々、同じ幼稚園のママ友との付き合いも始まることになります。実は明日海は過去のトラウマから対人関係に恐怖感があり、強いストレスを抱いています。

 

なんとかママ友グループの面々と挨拶を交わすことができた明日海ですが、そこに、「キャナルタワー羽浪」で一番高級なコアタワーの最上階である50階角部屋に住む真宮孔美子(まみや くみこ)が現れます。人気イメージコンサルタントとして活躍し、貴金属やバッグ、靴に至るまで超高級のものに身を包んでいる孔美子は、周囲を圧倒するオーラを放っていました。孔美子を見て、青ざめる明日海。実は孔美子は学生時代の同級生で、あるきっかけから壮絶ないじめを受けており、その時の心の傷が、今も明日海を苦しめていたのでした。

 

杏の通う幼稚園の入園式があり、否が応でもママ友たちとの交流が始まります。人気モデルを夫にもつ楠紗都(くすのき さと)や、区議会議員の義父を持ち、インスタ映えする華やかなことが大好きな桜庭心菜(さくらば ここな)、穏やかな性格で、自然派を好む丸山朋代(まるやま ともよ)など、個性的なママ友が登場するのですが、表面的に幸せそうに振る舞っていても、実は人に言えない闇を抱えています。これがやがて、タワーマンション内の人間関係にさまざまな影響を及ぼし、事件を引き起こしていきます。また、あるママ友と、別のママ友の夫との不倫が進行しはじめるなど、トラブルの火種はどんどん増えていきます。

 

いじめのトラウマで対人関係に恐怖感を抱いている明日海は、杏のことを第一に考えてママ友とも仲良くしようとしますが、小さな行き違いからママ友に疎外されたり、身に覚えのないことで責められたりします。その背後にちらつくのが、かつて明日海をいじめていた孔美子。明日海にとっては忘れたくても忘れられない出来事であり、その加害者である孔美子に至っては、一生許せない存在。それなのに、孔美子は「運命の再会ね!」と明日海に駆け寄り、いじめについては「なんのこと?」と言い放ちます。

物語が進むにつれ、孔美子は明日海に過剰ともいえる執着を見せるようになります。購入したタワーマンションから引っ越すことはできない明日海は、せめて、孔美子に関わらないで自分が大切にしてきた家族との暮らしを守るべく果敢にも立ち向かっていきます。しかし、度重なるトラブルで明日海の心は弱っていき、そこに付け入るように孔美子が巧みに立ち回り、明日海を支配しようとします。同じタワーマンションに住むことになったのは本当に偶然なのか? 孔美子の狙いは何なのか? 謎が謎を呼んでいきます。

何より、この孔美子の底知れなさとキャラクターの強烈さがものすごい破壊力を持っています。名声や財力もフルに使って来るのだから、ひとたまりもありません。誰もが羨む暮らしを手に入れたセレブだからこそ、その闇の深さが際立って見えます。時折見せる奇行や恐ろしげな表情はまさにサイコパスのそれであり、読み手に恐怖感を煽ってきます。孔美子は明日海と同級生だから36歳なのですが、年齢を超越した凄みが感じられます。

 

 
 

タワーマンションを舞台にした、ママ友たちのドロドロ人間愛憎劇ということで、現実離れした物語に見えるかもしれません。でも、ママ友たちの腹を探り合うような会話、夫との関係、他の人には言えない悩みなどはリアル。また、大人になっても怯え続け、自分に自信が持てない明日海を通して、いじめが及ぼす深刻な影響やいじめ被害者の悲痛が鋭く突き刺さってきます。

10月13日に発売されたばかりの6巻でも、孔美子の恐ろしさは全開。想像の斜め上を行く展開に目が話せません。とにかく孔美子が強烈すぎるので、ぜひ作品を読んでその怖さを味わってほしい!

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作者プロフィール
すえのぶけいこ

3月23日生まれ。おひつじ座、O型。 『手をつなごう』で第338回BFまんがセミナー別フレ賞グランプリを受賞してデビュー。 代表作『ライフ』で第30回講談社漫画賞受賞。

 

『おちたらおわり』
すえのぶけいこ 講談社

念願かなって、新築のタワーマンションに引っ越してきた主婦の明日海(あすみ)。 娘の杏(あん)を通して、4人のママ友ができるが……? 憧れのタワマンを舞台に繰り広げられるママ友同士の過酷な人間模様を「ライフ」のすえのぶけいこが強い筆致で描く!!