中学受験という特殊な世界を、まるで『スラムダンク』のように胸アツな真剣勝負として描いた受験マンガの注目作、『二月の勝者-絶対合格の教室-』。2021年10月16日からテレビドラマもスタートしますが、連載開始当初、誰がそれを予想したでしょうか。
過熱する中学受験ブームが背景にあるとはいえ、当事者は一部にすぎません。にもかかわらず、大ヒット快進撃を続けるこのマンガ。その秘密は、きっと冒頭を読んでいただければわかるはず。
……思わず閉じたくなるこのテンション。予想していたさわやかな成長物語とはちょっと違います。
君たちが合格できたのは
父親の「経済力」
そして
母親の「狂気」
この有名な冒頭のセリフは、のちに数倍の破壊力を持って、存分に回収されていきます。母の狂気とはこれいかに。怖い。
とにもかくにも、何やら不穏なセリフを口にするスーツの男こそ本作の主人公、黒木蔵人。職業は塾講師。親を「スポンサー」、生徒は「金脈」と口にしてはばからない絶対カリスマ講師の彼が、何の事情か受験塾の王者「フェニックス」を辞め、舞台となる中堅塾「桜花ゼミナール」にやって来たことから物語は動きだします。
2月に始まり、翌年2月にクライマックスを迎える中学受験。その壮絶な1年の生徒、親、そして講師の激闘と塾産業の内幕を、もうひとりの主人公・新人講師佐倉麻衣の視点から描きます。
空手の有段者で子ども好きの佐倉ですが、中学受験の経験がありません。新卒で桜花ゼミナールに入社し、研修として入試直前期の吉祥寺校に派遣されます。上司である校長から、「受験生の7割は、第一志望に受からない」と聞いてその厳しさを痛感。それでも入試直前までひたむきに努力を続ける子どもたちを目の当たりにし、心を寄せていきます。
素直で真っすぐな体育会系思考の佐倉は、子どもの応援団気分で2月1日を迎えます。ところがここで現実に直面。校舎トップの男の子が、1日の受験を終えた夜、泣きながら校舎にやってきます。彼は御三家・麻布に挑んだにも関わらず、トラブルが発生。
受験前夜に質問に来ていた、小学大学附属志望の木下くんも、2連敗中。いてもたってもいられない佐倉は木下くんのラストチャンスの日、入試当日応援を志願。
コロナ禍前は中学受験の風物詩でもあった、塾講師による校門前の応援。御三家の様子などは昔からテレビで取材されることも多いので、ご覧になったことがある方もいるでしょう。
大雪の当日、佐倉がなんとか到着すると、一人だけ、雪の中で生徒を待ち受ける講師がいました。トップ塾「フェニックス」の腕章をつけたあの男です。
大雪のため、到着できた「桜花ゼミナール」の講師は佐倉のみという状況で、最大のピンチが。木下くんが到着早々、佐倉に詰め寄ります。水蒸気の公式があやふやなことに気がついて、パニックに陥っていたのです。
新人である佐倉は、理科の質問に答えることができません。しかしそのとき、唐突に、答えが降り注ぎます。
この圧倒的かつ絶対的な安心感と存在感。彼の前に、佐倉は自分の無力さを痛感します。
そして正式配属の日、心機一転、子どものために頑張ることを誓った佐倉の前に現れたのはあの日の男、超カリスマ講師・黒木でした。
受験塾は「こどもの将来」を売る場所です。
と言ってのける、新しい上司の黒木。果たして本当に素晴らしい先生なのか、それとも……?
このマンガに登場するキャラクターは皆、現実と同じように決して万能ではありません。
鉄道に熱中するあまり、受験勉強に身が入らない子。自分に学歴がなく苦労しているため、なんとか子どもに課金して武器を持たせたいと願う母。学校は不登校ながら、塾に居場所を見出していく子。教育熱心が高じて子供の幸せという目的から外れていく父、そしてついに一線を超えてしまう母……。
そしてすべての想いは、黒木が言った冒頭のセリフに集約されていきます。
胸熱く、魂を揺さぶる戦いの軌跡を、ぜひその目で確かめてください。
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『二月の勝者-絶対合格の教室-』
(c)高瀬志帆/小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中
中学受験生の新学期・2月。中堅受験塾「桜花ゼミナール」の吉祥寺校に、新たな校長が就任します。彼の名は黒木蔵人。トップ塾、「フェニックス」を辞めて「桜花ゼミナール」にやって来た超有能な受験のプロ。
しかし新人講師・佐倉麻衣は、過激な黒木の発言のため、たびたび衝突。
果たして黒木は「君達全員を第一志望校に合格させるためにやってきた」という言葉を実現できるのでしょうか?
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