「かわいい」。それは女性にとってつい反応してしまう特別な言葉じゃないでしょうか。子どもの頃や学生時代に言われた「かわいい」「かわいくない」という他人からの評価はずっと心に残るものだし、いくつになっても「かわいい」と言われたら、少なくとも悪い気はしませんよね。

『かわいげのない女』は、タイトルそのまま「かわいげがない女」というレッテルを貼られている女性の「かわいさ」に思わずキュンとときめいたり、ジワっと切なくなる作品です。

『かわいげのない女』1 (フィールコミックス)

バカな男どもが求める
”かわいげのある女”になんか

私は絶対なってやらない!!

 

そう誓う『かわいげのない女』と呼ばれる、WEB広告会社でデザイナーとして働く山田さくら。上司にメガネ屋のデザイン担当から降りろと言われたことを、中途同期の花川にじこと小島啓午に愚痴っています。

 

上司に意見したら「お前は口出すな」って逆ギレされた、と愚痴りまくるさくらに、にじこが「またさくらはぁ!そうやって男のプライド傷付ける言い方するぅ!」と、女の処世術をアドバイスする。

男の人なんて単純なんだから
「矢部さんなら安心です」って言っとけば
下手に出てくれるのに

死んでもやだ、とムッとするさくらだが、にじこは、

 

女の武器使わなきゃ損じゃない?と「かわいげ」が必要であることを言う。

上司と衝突ばかりで仕事がうまくいかないさくらに対し、にじこや啓午は仕事が順調に進み楽しそうだ。新プロジェクトを進めることになった啓午は、さくらに言う。

さくらさ もったいないと思わないか?

続く啓午の言葉に、さくらは頬を赤くする⋯⋯。

 

啓午は天然で「タラシキャラ」っぽいのだけど、さくらは嬉しくなってしまうのでした。

帰りの電車でも、明日からなーんにもやることないんだよ? と落ち込んでいると「さくらは必要だよ」、酒が強くないのに飲みすぎて気持ち悪くなりかけている時に「家まで送ろうか? 歩けるか?」と啓午に心配されて、さくらはときめきまくり。

帰宅してから一人、さくらはこの優しさが私にだけだったら、と妄想する。

啓午 私のこと ――好きなのかな?

 

一方、にじこは啓午が社内の女性社員の間で、意外と注目されていることに気づきました。
恋愛至上主義でハンター気質のにじこは「灯台下暗しだったかも」とロックオンを開始。

 

そして、社内で仕事がなくなったはずのさくらは新プロジェクトへの異動を命じられる。新プロジェクトとは、啓午がプロジェクトマネージャーで進める案件だった! 
「俺がずっとやりたかったことなんだよ それには さくらが必要だ」

 

さくらの仕事も恋もいい方向へ動き出すのか!? と予感させるも、「かわいげ」のなさでさくらはこの後、大きなショックを受けることになるのです⋯⋯。

異動先のプロジェクトメンバーで、ディレクターの半田今日介は、さくらがかつて作った声優事務所のサイトを「痛い」と評しました。
水着のグラビアが多用されたそのサイトを作る時、さくらは「声優を目指している子たちはこんなの見たいわけじゃない」と訴えたのですが、クライアントの意向だと上司に聞き入れてもらえなかったのでした。
啓午はその話をした時、「さくらはいつもエンドユーザーのことを考えてるだろ」と言います。

 

ずっと見てくれてたんだ 私がやってきた事

と、やっぱり啓午にときめくさくら。毅然とした対応のせいで「かわいげがない」とレッテルを貼られ、上司から煙たがられていたさくらが、会社員として報われた瞬間です。

でも、啓午がさくらを女性としてどう見ているかはまだわからないんですよ、この時点では。
啓午は、仕事仲間としてのさくらを必要としているのに対し、さくらは啓午に恋愛感情を抱きはじめています。「啓午、私のこと好きなのかな?」とすぐに思ってしまうところがさくらのかわいさです。

そして、頑なに自分の主張を崩さずチャンスを逃しているさくらと、最短距離で欲しいものを手に入れていく「かわいげのある女」のにじこの対比。
自分の信念を貫くべきか、欲しいもののために自分を変化させていくべきなのか? どちらの生き方を選択するかは迷うところかも。
ただ、「かわいげ」がゼロな女性はいない! 啓午への恋愛感情を自覚しはじめたさくらを見ているとそう思います。「かわいい」は作れる、じゃなくて、誰でも「かわいい」を持っているんです。


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『かわいげのない女』
原作・大野紺 作画・入絵優

バカな男どもが求める“かわいげのある女”なんか、 私は絶対になってやらない!!
Web広告会社でデザイナーとして働く山田さくらは、中途同期の花川にじこと小島啓午に、 いつもの様に居酒屋で上司の愚痴を言っていた。二人のアドバイスを余所に、 いじけるさくらだったが、 優しい言葉で包んでくれる啓午のことが密かに気になっていた。
そんなある日、新しい仕事を一緒にすることになった、 後輩ディレクター半田今日介から、 自分が過去に制作したWEBサイトをみて「なんか痛い」 と失礼なことを言われる。


作者プロフィール

原作・大野紺
雑誌ライター、CDプロデューサーを経て『かわいげのない女』(祥伝社)で漫画原作者デビュー。『恋のタユタウ』(ボルテージ)、その他新作も鋭意制作中。

作画・入絵優
『かわいげのない女』をめちゃコミックにて連載中。
Twitterアカウント:@irieyu


構成/大槻由実子