同じ効果の薬を重複して処方されてしまうことも


例えば、近所のクリニックで血圧が高いことを指摘され、血圧の薬であるアムロジピンが処方されたとします。患者さんは、クリニックに併設された薬局でアムロジピンを受け取ります。

その1週間後に、心臓の専門家の外来の予約があり、そこで再度血圧が高いことを指摘されます。そして、今度はニフェジピンという薬を始めましょうという話になります。

ここで、患者自身がかかりつけ医との1週間前の会話をしっかり把握していて、「1週間前にアムロジピンという薬を始めたばかりです」ということを伝えられれば、心臓の専門家はそれに気がつき、「まだアムロジピンが開始されて間もないので、それで血圧が安定してくるかどうか様子を見ましょう」と判断されるでしょう。

 

しかし、患者さんが、かかりつけ医との間で、血圧だけでなく糖尿病やコレステロールの話もしており、何のためにアムロジピンを処方されたかを忘れてしまっていたり、アムロジピンを飲んでいても血圧が高いから、もう1種類薬が必要と判断されたのだと解釈したりしてしまえば、「医師にわざわざ伝えるのも失礼かな」などと躊躇し、話す機会を逸してしまうかもしれません。

 

そうなると、たちまち1週間で、アムロジピンとニフェジピンの2種類の薬が始められてしまうことになります。しかも実はこの2種類の薬、ともにカルシウム拮抗薬と呼ばれる薬であり、兄弟のような関係です。

すなわち、アムロジピンをダブルで処方されてしまったのとほぼ同じ状況なのです。これでは、それぞれの医師が考えている以上の効果が出てしまう、あるいは副作用のリスクが増強されてしまうことが懸念されます。

これらを同じ薬局で受け取っていれば、薬局の薬剤師が気づき、病院に「疑義照会」と呼ばれる医師への問い合わせがかかることになります。

しかし、かかりつけ医の処方はクリニック併設の薬局で、大きな病院受診のあとは病院の近くの薬局で、と受け取りの薬局が別々になっていたりすると、重複のある処方が誰にも気づかれず、患者さんに両者とも投与されてしまうことになってしまいます。

医師の間で、あるいは患者と医師の間で、あるいは薬剤師と医師の間で、何らかのコミュニケーションがあれば防げることかもしれませんが、コミュニケーションが欠いてしまうとこんなことが起こりうるのです。


前回記事「副作用リスクのない薬はない。必要な薬の選び方とは【医師・山田悠史】」はこちら>>

構成/中川明紀
写真/shutterstock

 
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