家庭内での会話が心の強さを育む


話題が「子育て法」へと移り、丹羽さんは藤井さんが幼少期にどう過ごしたかを深掘りしていきます。その過程で丹羽さんは藤井さんに「ご家族と将棋の話はよくしていましたか?」という質問を投げかけますが、それに対する藤井さんの答えは「自分の将棋のことについては、小学生くらいまでは話していました」というものでした。

 

丹羽 どうして、こうした子どもの頃の家庭での会話について聞いたのかというと、家庭環境、両親の話、あるいは周囲の話に、直接将棋に関わりない部分もあるけれども、心の強さの点でものすごく影響を受けているんじゃないかなと思うからです。子どもの脳に刻み込まれるのは、具体的な将棋の技術の話とか、そういうことじゃないんですよね。いざというときに落ち着いているとか、あなたの勝つことに対する執念とか、強さの源泉となっているものが、環境によって育まれたんじゃないかと思います。藤井さんが二冠を獲ったときの将棋を見ていて、この人は本当に天才だ、やはり普通じゃないなと思いました。それほどしっかりしています。いざというときにふらついたり、もう心臓がバクバクしたり、「勝ったら皆が騒いで大変だろう」とかあれこれと考えたり、そういうこともあるのかもしれないけど、まったく感じさせませんね。

 

藤井 小さい頃は負けてよく泣いていましたし、心が強かったとは思えないですけど……。たぶん、いろいろと素直に吸収できる環境だったんでしょうか。家でも将棋のことを、自分が好き勝手に話していたと思うんですけど、家族がいろいろと聞いてくれていました。当時は自分にとって、そういう自覚はありませんでしたが、確かにそういうところで成長できたのかなと思います。