「パスカルが来てくれて、マルゴは嬉しかっただろうな」
「うん。正反対の二人だけど、本当に良いカップルだと思う」
ベッドに入って、カンタンとしんみり語らう。
「パスカル、子供が嫌いなわけじゃないんだね。怖いって気持ち、よくわかる」
「祐希も子供が怖いの!?」
カンタンが意外そうに目を丸くしたのが、とても意外だった。
「僕と祐希の子供でも?」
それがどうして怖くない理由になるんだろう? パスカルの語ったことが、私にはよくわかる。
「……怖いよ、自信ない」
ついに言ってしまった。口にしたらなにか決定的になりそうで、ずっと先伸ばしにしてきた本音。
「そっかな。きっとおもしろいのに。夢中になると思うけど」
でもカンタンは、なんてことないいつもの調子でニッと笑うから拍子抜けする。
「おやすみ」
「……おやすみ」
絶対に追い詰めないでいてくれることに引け目を感じながら、目覚ましのアラームをかけようと携帯に手を伸ばした。
と、母からメールが入っている。珍しい。日本はまだ早朝なのに。
<今朝、おばあちゃんが亡くなりました。>
私は叫んでいた。そんな。元気になったんじゃ――
「どうした⁉」
言葉が出ない。頭が回らない。
「おばあちゃんが、おばあちゃんが……」
「昨日の夜、また風邪気味だって連絡があったんだけど、朝に急変したらしくて。駆けつけたけど間に合わなかった。あっというまで、たぶん眠った後、本人は苦しまずに……」
母の淡々とした報告に、バスルームで泣き崩れた。痛い。胸が痛くて壊れそう。
私の大好きな、おばあちゃん――
「とにかく急いで帰国便、探すね」
ひくひくと声が詰まってしまう。二年近く会えないままの別れなんて、あんまりだ。
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