深夜の大喧嘩。子供が嫌いなわけじゃないのに_img2
 

「パスカルが来てくれて、マルゴは嬉しかっただろうな」
「うん。正反対の二人だけど、本当に良いカップルだと思う」

ベッドに入って、カンタンとしんみり語らう。

「パスカル、子供が嫌いなわけじゃないんだね。怖いって気持ち、よくわかる」
「祐希も子供が怖いの!?」

 

カンタンが意外そうに目を丸くしたのが、とても意外だった。

「僕と祐希の子供でも?」

それがどうして怖くない理由になるんだろう? パスカルの語ったことが、私にはよくわかる。

「……怖いよ、自信ない」

ついに言ってしまった。口にしたらなにか決定的になりそうで、ずっと先伸ばしにしてきた本音。

「そっかな。きっとおもしろいのに。夢中になると思うけど」

でもカンタンは、なんてことないいつもの調子でニッと笑うから拍子抜けする。

「おやすみ」
「……おやすみ」

絶対に追い詰めないでいてくれることに引け目を感じながら、目覚ましのアラームをかけようと携帯に手を伸ばした。

と、母からメールが入っている。珍しい。日本はまだ早朝なのに。

<今朝、おばあちゃんが亡くなりました。>

私は叫んでいた。そんな。元気になったんじゃ――

「どうした⁉」

言葉が出ない。頭が回らない。

「おばあちゃんが、おばあちゃんが……」

「昨日の夜、また風邪気味だって連絡があったんだけど、朝に急変したらしくて。駆けつけたけど間に合わなかった。あっというまで、たぶん眠った後、本人は苦しまずに……」

母の淡々とした報告に、バスルームで泣き崩れた。痛い。胸が痛くて壊れそう。

私の大好きな、おばあちゃん――

「とにかく急いで帰国便、探すね」

ひくひくと声が詰まってしまう。二年近く会えないままの別れなんて、あんまりだ。