男性社会で理不尽な思いをしてきたからこそ抱く、スカッと感

「男女格差」に苦しむ女性がスカッとした!『イカゲーム』が社会現象を呼ぶ理由_img2
Netflixシリーズ『イカゲーム』独占配信中

普段は韓国ドラマを見ないのに、『イカゲーム』だけは例外的にハマったという奈美さん(41)。最初は単なるグロテスクな殺人ゲームだと思っていたそうですが、気づけばすっかりドラマの虜に。

次々と人が殺されていく残忍なストーリーの裏で、意外なことに奈美さんは“スカッと感”を抱いたと言います。

 

「ゲームに参加する登場人物を見ると、年齢も性別も国籍も様々なタイプがいました。その中でお年寄りや女性などは、他の参加者たちからかなり見下されていましたよね。参加者の誰もが『ゲームを勝ち残るには、肉体的に力がある若い男性が有利なのでは』と決めつけていました」

ゲーム参加者の中には、力で人を支配してきたようなドクスや、超エリートのサンウもいる一方で、老人や女性、体に障害を持つ外国人労働者なども混ざっています。

最年長の老人・イルナムは他の参加者からかなり見くびられていましたし、女性メンバーのセビョクやジウンも、力のある男性陣からは下に見られていました。

「そんな彼らが力ではなく頭脳戦で勝ち抜いたシーンを見て、かなりスカッとしたんです。セビョクたちが、男女差とか力の有無など関係なく、堂々と立ち向かっていく姿にもとても勇気付けられました。

『男の方が女より上』とか『男の方が実力がある』という考え方を押し付けられた経験のある女性は多いと思います。理不尽な思いや歯がゆい気持ちを抱いてきた身としては、セビョクたちと一緒になって、鬱憤を晴らせたような気分になって。そこからどんどんストーリーにのめり込んでいきましたね」

韓国の深刻な格差社会を描いていると言われる本作品。それが日本でも大ヒットしたのは、程度の差はあれど、共感できるポイントがあったからだと思います。特に男女格差については、私たち女性が最も感情移入しやすい部分だったのかもしれません。

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“ダメ男”がいつのまにか“イイ男”に見えていた


自称“イカゲームオタク”の小百合さん(37)は、韓国語のドラマ考察記事を読みあさったり、SNSで投稿されている解説を参考に、ドラマを繰り返し見返しているそうです。

黒幕が誰かわかった状態でゼロから見返すと、数々の伏線を発見し、ドラマを倍楽しめるのだとか。さらには、恋愛ドラマのようにイケメン推しの要素はないのにも関わらず、“イカゲームオタク”同士の間では、どの男性登場人物が一番タイプかを議論することで盛り上がるそう。

そんな小百合さんの“推し”は、主人公のギフンだそう。

「1話では、主人公のギフンが“ダメ男”にしか見えず、最初は『こんな夫だけは嫌だなあ…。そりゃ奥さんにも逃げられるでしょ…』と、嫌悪感さえ抱いていました。

ところがいざゲームが始まると、ギフンの心の優しさが何よりも目立つので、ダメ男だったはずの彼が次第に“イイ男”に見えてくるんです。最も嫌いなタイプの男性だと思っていたのに、自分の感情の変化に戸惑いました(笑)」

ギフンはギャンブル三昧で借金まみれ。母親には迷惑をかけ、前妻に愛想をつかされ、お金がなくて娘にまともな誕生日プレゼントすらあげられないような父親です。そんな底辺な生活を送る彼は、たしかに1話では、夫にも父親にもしたくないような“どうしようもないダメ男”というイメージでした。

ところがゲームに参加し、ストーリーが進むにつれて不思議と彼が魅力的に見えてくるのです。

しかしそこには、理由があります。ゲーム参加者たちの世界は、現実社会とは違って、学歴や社会的地位などのスペックが全く意味をなさない世界。借金を抱えているという条件も、皆同じです。

そんな中、他人の命を犠牲にしてでも生き残ろうとする参加者たちとは対照的に、ギフンの情の深さや優しさ、他人を信じる心は光り輝いて見えました。

たとえ現実の世界では“どうしようもないダメ男”だとしても、彼が転落してしまったのは、決して悪いことをしたからではありません。

だからこそ、観ている私たちは「一度底辺に落ちたとしても、どうかのし上がってほしい」と、気づけば心からギフンを応援しているのです。そして心のどこかで、ギフンに自分を重ね、「たとえ何の武器も持っていなくても、人生はきっと一発逆転できる」という望みを託している人も多いのかもしれません。

それにしても、ファン同士の間で“推し”が誰かを議論し合うというのは面白いですね。ちなみに私の推しは、イケメン警察官のジュノでした(笑)。

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『イカゲーム』がヒットしたのは、SNSとの親和性の高さにも理由があると思います。

奇妙なBGMや、「だるまさんが転んだ」の韓国語フレーズ。そして◯△□のマスクを被った男たちがカラフルな建物の中を行進していく様子などは、色使いもビビッドで、インパクトが強烈でした。

独特だけれど“一度見たら忘れられない”シーンの連続は、知らぬ間に洗脳されていくかのような中毒性があり、視覚的にもInstagramなどと相性抜群。拡散されるのに完璧な要素が揃っていて、だからこそ世界中で大流行したといえるでしょう。

後編では、ドラマ中に出てきた韓国料理のレシピを公開中!
「イカゲーム」の世界にどっぷり! 韓国の“思い出弁当”のレシピ【おうちで韓国ドラマごはん】​>>

構成/山本理沙
この記事は2021年11月5日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。

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