生き方、働き方についての話には必ず出てくる「キャリア」という言葉。経験や職歴、もしくは仕事そのものを指す言葉として頻繁に使われていますが、一方で、この4文字が出てきるだけで何となく不安や心細さ、もっと言えば「自分なんてお呼びでないのかも」といった疎外感を抱いてしまう、という人は多いのではないでしょうか。キャリアウーマン、バリキャリといった言葉に引っ張られてか、どうも「ごく一部の、選ばれた人たちのための言葉」という印象がありますよね。
でも、本当にそうでしょうか。仕事に上も下もなく、自分らしい生き方・働き方は人それぞれ。であればキャリアだって「特別な人たちだけのもの」なはずはありません。
そんな思いから今回は、人材エージェント会社Warisの共同代表で、連載「100年時代のキャリアデザイン」でもお馴染みの田中美和さんに、改めて訊いてみました。キャリアって、いったい何だと思いますか?
キャリアにアップもダウンもない!
振り返れば、誰の後ろにも道ができている
「一度、仕事をやめてしまった私にはキャリアなんてもうないですよね……?」
「私、強みが何もなくて……。自分のキャリアをどう考えていったらいいかわからないです」
自分のキャリアに自信が持てない、はたして自分にキャリアなんてあるのだろうか……? こんな不安や悩みの声をよくいただきます。
キャリアと聞くと、ともするとものすごくキラキラした仕事経験を重ねていて、報酬も肩書きも素晴らしくて……そんな人物像を思い描く人が少なくないのではないでしょうか。上へ上へとのぼりつめていくようなイメージです。
でも「キャリア」って、本来的には決してそういう意味ではないんです。キャリアの語源は、ラテン語だと言われています。もともとは、荷馬車や四輪の荷車の通り道、轍(わだち)を意味する言葉で、それが転じて、人の足跡・経路・遍歴を意味するようになりました(※1)。つまり、キャリアという言葉には、人の経歴や人生全体をあらわすような意味があるのです。100人いれば100通りのキャリアがあって当たり前。キャリア構築理論の第一人者であるサビカスは「キャリアにアップもダウンもない」と表現しています(※2)。
私自身、キャリアとは、その人が生きる上で経験してきたすべてのこと、そして、これからどう生きるかを仕事を軸に考えることだととらえています。その意味で無駄なことなんてなにひとつない。すべてが今につながっているし、振り返ればたどってきた道(=キャリア)がある。そして今、この瞬間に行動していることが未来のキャリアにつながっていきます。
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