クレームには悪い面だけでなく良い面もある
さまざまなクレームやトラブルを乗り越えてきた関さんですが、それらを完全に悪者視しているわけではありません。クレームやトラブルは自分の未熟さを自覚するきっかけにもなるようです。その一例として、目的の駅に3~4分早く到着する特急列車に乗り換えようかどうか迷っている乗客に対し「このままこの列車で向かわれても、さほど時間は変わりません」と案内してしまい、その乗客から叱られたときのエピソードを挙げています。
「もしかしたら、家族の誕生日にプレゼントを買って、1分でも早く帰宅したいのかもしれないし、しばらく会っていなかった友人や家族がその日だけ特別に帰ってきているのかもしれない。自分の娘が遠く離れたところに行ってしまう日なのかもしれないし、その数分で、乗り継ぎの列車に乗れるかどうかの瀬戸際なのかもしれない。乗客一人ひとりにそれぞれの人生があり、考えていることも違う。乗客が何を考えているのかを考え抜いて、車掌として最善な判断を下すことが求められていたのである」
関さんはこのような失敗を繰り返すなかで、自分自身の成長を感じたといいます。とはいえ、クレームやトラブルは決して心地よいものではありません。関さんはできれば避けて通りたいこれらの事象と向き合うコツについて語っています。
「そのときは嫌な気持ちになるのだが、目の前に起こる全てのことには必ず意味がある。一つひとつの事象が、自分の成長の材料だと考えることができれば、人間として成長できるのだ。あなたも『現状を変えたい!』と一歩踏み出そうとしたときに、クレームが頭をよぎり、スタートが切れないことがあるかもしれない。そんなあなたに、一つだけ伝えておきたいことがある。もし、クレームをもらうことがあっても、『クレームをいってきてくれて、ありがとう』と思うことだ。このように語尾を『くれた』と変え、感謝するだけで、自分を成長させるための貴重な意見に早変わりするのだ」
著者プロフィール
関 大地(せき・だいち)さん:
1984年群馬県生まれ。2002年、JR東日本に新幹線の保線社員として入社。2007年、高崎線の車掌となり、後に英語アナウンスを導入、「英語車掌」と呼ばれるようになる。2019年JR東日本退社。同年、群馬県中之条町より、「花と湯の町なかのじょうPR大使」を委嘱される。著書には『車内アナウンスに革命を起こした「英語車掌」の英語勉強法』(ベレ出版)、『乗務員室からみたJR英語車掌の本当にあった鉄道打ち明け話』(ユサブル)などがある。
『車掌出てこい! 英語車掌が打ち明ける 本当にあった鉄道クレーム』
著者:関 大地 マキノ出版 1540円(税込)
「不正乗車を認めないどころかクレームを付けてきた女子高生」「車内アナウンスをしなかったといい張る寝過ごし客」など。10年以上車掌を務めた著者が体験した、困った乗客たちの実態とその対応法を紹介。列車内だけでなく日常生活で出会う「困ったちゃん」にも応用できるスキルがたっぷり詰まっています。
構成/さくま健太
関連記事
「お客様は神様」を振りかざすモンスター客が増えている>>
素直に謝れない人は、何千万円も損しているかもしれない>>
他人のおせっかいがストレスな人に...角を立てない“上手な断り方のコツ”とは?>>
ムカついた瞬間「私のこの怒り、何点?」。“まぁ許せる”ゾーンを広げる体質改善【アンガーマネジメント】>>
「怒り」の正体は「恐れ」...?自分の中の怒りを鎮火させる、意外な方法>>
Comment