このところモンスター・クレーマーのことがよく話題になります。労働組合のUAゼンセンが2017年に行った調査によると、業務中に顧客から迷惑行為を受けた人の割合は73.9%に達していますから、顧客と直接、接する仕事に従事している人の多くが被害を受けているのは間違いありません。
この問題は以前から指摘されているのですが、なぜ改善されないのでしょうか。
実はモンスター・クレーマーには隠れた共犯者が存在しているケースがあり、しかも、その共犯者は被害者が属する組織の内側にいたりします。
日本の組織では、クレーマーに対して毅然とした態度を取ろうとすると「それはやり過ぎではないか」「あなたが問題を大きくしている」など言って、足を引っ張る人が次々と出てきます。セクハラなどの問題も同じですが、それを指摘する人が逆に批判されるというのは、前近代的なムラ社会ではよく見られる光景です。
筆者がサラリーマン時代、取引先企業の女性担当者にセクハラまがいの行為をしたとされる社員がいました。多くの場合、被害者の女性は泣き寝入りするわけですが、その話を聞きつけた取引先のトップは、会社に対して正式に謝罪を要求し、問題は迅速に解決されました。
つまり組織の上に立つ人が、不当な状況に対しては、たとえ取引先であっても毅然と対応するという覚悟を決めていれば、こうした問題は解決するものなのです。
モンスター・クレーマーが発生する原因としてよく議論されているのが、「お客様は神様である」という日本の伝統的な商慣行です。しかしながら、「日本には○○の伝統があるから」「○×主義があるから」といった話が出てきたら要注意であると筆者は考えます。こうした理解の仕方は、情緒的には意味があるかもしれませんが、物事の根本的な解決を遠ざけてしまう可能性があるからです。
そもそも、日本社会が伝統的に「お客様は神様」だったのかと考えると、かなり怪しいと言わざるを得ません。
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