人生も後半に入ると、今までは「これでいい」と思っていたことが、「あれ?これからもこのままでいいのかな」なんてふと疑問に思うことがありますよね。経験値が増え、自分の価値観も変わってきているからこそ感じ始めたモヤモヤ。その解消に、エッセイストの小川奈緒さんは目下前向きに取り組んでいます。

お金、暮らし、ファッションなどにまつわる「これまでの習慣や思い込みを見直す」ことがテーマの新刊エッセイ『ただいま見直し中』から、今回は小川さん流の靴の整理についてご紹介します。


いらない靴は1足も捨てずメルカリへ


最近、下駄箱からわたしの靴が、1足、また1足となくなっていることに、家のなかの変化にはあまり敏感ではない夫もさすがに気づいて、「靴、いったいどうなっちゃうの?」と聞いてきた。 

 

そう、ただいま自分の靴を、少しずつ処分しているのである。といっても、1足も捨ててはいない。きれいに手入れをして、メルカリに出品すると、ちゃんと引き継ぎ手が見つかり、気持ちよく旅立っていってくれる。 

いわゆる「靴好き」と呼ばれる人種でもないから、もともと家の下駄箱に入る以上の数は持たないことに決めている。これまでも新陳代謝をくり返してきたし、いま所有している靴だって、すべて現役で気に入っているものばかりだ。でも、どんなにその靴のモノとしてのたたずまいが好きだとしても、気づけば3年も履いていない、なんて靴が、下駄箱を開けて精査すると、見つかるのである。

というか、普段の行動を振り返ってみれば、自粛生活で行動範囲が限られているせいもあるけれど、よく履いている靴なんて、実は2、3足なのだ。だからといっていきなり靴を3足にしぼろうとまでは現時点では考えていないけれど、この先、自粛生活が明けたところで、これまで何年も履いていなかった靴をまた履くようになるだろうか。そう自問して、「NO」という声が自分のなかから聞こえたら、手放す準備をする。

幸い、メルカリで購入してくれた相手の多くは、品物の受け取り後にそれぞれ喜びのメッセージをくれるので、未練も寂しさも後悔もない。 むしろ、「大切に使わせていただきます」というコメントが届くたび、あぁよかった、きっと正しいことをしたのだ、という気持ちになれる。

クローゼットの整理をしていると、自覚していない今の気分に気づかされることがあって、どうやらわたしは、「軽く、軽く」という方向へ気持ちが向いているらしいのだ。