第7話で無念の死を遂げたしおりの“最愛”は、15年の自分だったのだと思います。康介(朝井大智)に、すべてを壊される前の自分。だから彼女は、女らしい服を捨てて言葉遣いも変えた。そして、事件の真相に迫るために奔走してきたのに。急に消えてしまうなんて……。

毎回「苦しすぎる……」と呟いてしまうほど、それぞれの登場人物の想いがしんどい。とくに、梨央と大輝の関係性ですよ。かつて愛していた人と、15年越しに再会できたというのに。それが、“重要参考人”と“刑事”としてだなんてしんどすぎる。好きになってはいけない。本当は、今すぐにでも抱きしめたい––––––。そんな想いが交錯した第6話は、涙なしでは観ることができませんでした。宇多田ヒカルさんが歌う主題歌「君に夢中」も、ズルいんですよね。<人生狂わすタイプ 許されぬ恋ってやつ? 分かっちゃいるけど 君に夢中>って歌詞がもう……。そのまま、梨央と大輝の関係性で(涙)。

 

第7話では、こぼした飲み物を拭こうとして、梨央と大輝の手が重なる場面があったんですよ。そして、見つめ合う。王道ラブコメだったら、絶対にキスする展開じゃないですか? でも、『最愛』はしない。顔を見合わせて笑って、何もなかったように飲み物を拭くんです。ただ笑い合うだけなのに、こんなにキュンとさせてくるとは……。明らかなキュン展開を作らなくても、ときめかせることができる。このドラマの凄みを感じた瞬間でした。

さらに、あらゆる手段で梨央を守る弁護士・加瀬(井浦新)も最高です。最高ポイントのひとつは、この2人が(おそらく)付き合っていないこと。明らかに“いい雰囲気”なので、序盤は「あれ? 付き合ってるの?」と思いました。でも、どこにも属さない関係性なんですよね(加瀬は、“家族”と言っていましたが)。加瀬は、梨央のことを“何があっても絶対に守る”という信念を持っている。いやあ、一家に一人加瀬さんが欲しい……。

随所にフラグは立っていますが、梨央は優と同じく記憶障害を持っているのかもしれません。というのも、第6話で加瀬と梨央がパフェを食べに行く場面がありました。そこで梨央が、「なんでこんな可愛い店知ってるの?」と尋ねます。すると、加瀬は「……言わなきゃダメ? それ」と返しました。恋人と来たのかな? 実は甘党だったりして……? と想像を膨らませましたが、それなら普通に、「昔恋人と来て」とか「甘いもの好きだから」と返してもいいよな、と。優しすぎる加瀬のことだから、「梨央が店に来たことを忘れている→気付かせないようにはぐらかした」という線もあるのではないかと思いました。

さらに、梨央と優の父・達雄が、事件の真相を明かしたムービーで、「あれ(事件の日)から、今日で2日目。この頭のなかが、忘れよう忘れようとしています。覚えとるうちに、記録を残しとこうと思います」と言っていました。大半の人は、記憶を忘れようとしても簡単には忘れることができないもの。大きなショックを受けて記憶を失ってしまう人もいるかもしれませんが、失う前から“もしかしたら忘れちゃうかも”と考える人はほとんどいない。ということは、達雄は過去に記憶を無くしたことがあったのか? その遺伝が、優だけでなく梨央にも……。つい、深読みをしてしまいます。

さて、残すところあと3話となってしまった『最愛』。梨央たちの“最愛”を守る旅を、最後まで見守っていきたいと思います。


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